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お花見に行こう!

 昨日、新宿御苑にお花見に行ってきた。ニュースで週末には桜が散り始めるだろうと伝えていたのでその前に桜を見に行くことにした。先週は小雨の中、花冷えのする日本庭園の桜を見に出かけたが、花見には少し早かった。

 

 新宿御苑には若い頃、大学生のときか、もしかすると三十代のときかうろ覚えだが、お天気の日に新宿御苑の芝生の上に寝転がっていたような記憶がある。何のために行ったのか、季節も春だったのか、それとも初夏、ひょっとすると秋なのかそれすら分からない。

 

 私の場合、公園や庭園は大抵の場合、気晴らしのために行っていたから、そのときも空いた時間を使って思い付きで訪れたのだと思う。今回は、花見という口実で出かけたが、実際は気晴らしに行ったような気がする。

 

 ネットで情報をチェックしたら平日も入り口で行列ができる程、混雑しているので新宿門より大木戸門から入る方が入りやすいだろうということだった。それで新鎌ヶ谷駅からのアクセスを調べていたら千駄ヶ谷駅から徒歩5分という怪情報?が出てきた。

 

 私は新宿御苑に千駄ヶ谷門があることを知らなかった。正直、新宿という街、と言うより雑踏があまり好きでないので実は新宿御苑に花見に行くことには少しためらいがあった。家内もわざわざ混雑した場所に行きたくないようだったが、何事も挑戦ということで押し切った。

 

 もし、今回、新宿御苑に行って期待外れだったら、次の機会の花見候補から外せばいいし、実際に行ってみないと良し悪しは判断できないと家内を説得した。しかし、千駄ヶ谷駅から徒歩で行けると知って気分が随分と軽くなった。

 

 しかも、乗換えも1回で運賃も予想外に安いので少し驚いた。白井から新宿まではすごく遠く感じていたが、新鎌ヶ谷で東武線に乗って船橋で乗り換えれば千駄ヶ谷まで1本で行くことができる。運賃も片道659円で済む。千駄ヶ谷まで1時間ちょっとだ。

 

 午前中、途中下車して用事を済ませてから午後2時前に千駄ヶ谷の駅に着いた。「新鎌ヶ谷から電車に乗って千駄ヶ谷に着いたぁ~。ここは花見どころ・・・」と五木ひろしの歌詞が浮かんで来たりはしなかったが、足取りは軽かった。

 

 改札を出ると新宿御苑までの経路が書かれた看板が目の前に出ていた。道路沿いを右に50メートル程行って右折とあったが、50メートルはすぐだった。

 

 あまりに距離が短く感じたが、ほとんどの人が右折したのでついて行くことにした。前を歩いていた若い二人連れの中国人の女性も手前で曲がるか、直進するか迷って立ち止まって何やら話していたが、結局、我々と同じように指さしながらみんなが行く方へ行こうという仕草をしていた。

 

 右折するとそこは線路の下を通るトンネルになっており、トンネルを出るとそこは雪国ではなく細い道路が新宿御苑の柵沿いに伸びていた。歩道に面して中層の小規模のマンションが建っていた。

 

 2階のバルコニーの柵がガラス製のマンションがあり、テーブルとイスが新宿御苑に向けて並べられているのが見えた。きっと、休みの日はビールでも飲みながら借景を楽しんでいるのだろう。ちょっと羨ましくなって家内にこういう場所なら住んでみたいと呟いたら、住めるわけねぇだろうと軽く一蹴されてしまった。夢のない人だ。

 

 そうこうしているうちに新宿御苑の千駄ヶ谷門に着いてしまった。入り口は特に混雑しておらず、バーコードの印刷された入場券を購入して駅の改札のような入り口で機械に入場券をタッチして中に入った。

 

 大人は一律200円だ。シルバー割引はない。中に入ると満開の桜がすぐに目に入った。新宿門前近くの案内板の前でカメラを提げたおじいさん(自分ももうおじいさんの仲間なので他人のことをおじいさんと言うことにちょっと抵抗がある)が年配の女性に桜を見るなら千駄ヶ谷門が一番だと説明しているのを聞いた。入園してからそのことをたまたま知った。

 

 千駄ヶ谷門を入ってすぐの桜は枝が地面近くまで垂れて下がって圧巻だった。スマホを持った外国人が競うように写真を撮っていた。我々も写真を撮ったが、結局、千駄ヶ谷門に近い桜以外はその後、シャッターを切る機会があまりなかったように思う。

 

 桜の花びらが風で散り始めていた。桜の木の下を歩く人の肩に花びらが流れる光景を見て学校の教科書に載っていた「をみなごに花びらながれ・・・」という三好達治の詩のくだりを思い出した。

 

 確か学生のときに国語でこの詩を暗記させられた。その後、詩の大半を忘れてしまっていたが、何故か、をみなごに花びらながれという語句だけを桜の散るのを見るといつも思い出した。実は作者の名前も今回、改めて調べるまでは佐藤春夫だと勘違いしていた。

 

 千駄ヶ谷門から左回りに進み、途中、大温室にも入った。ちょっと驚いたのは大温室が無料で開放されていたことだ。「一般財団法人国民公園協会新宿御苑は、環境省からの委託を受け、新宿御苑の維持管理事業を実施」しているそうだが、園内はよく維持管理されていると思った。

 

 低料金で多くの入場者を呼び込むことでレベルの高いサービスが提供できているのだろうか。維持管理のために補助金が出ているのだろうか。調べていないのでよくは分からないが、公共サービスの在り方を考える参考になるのではないだろうか。

 

 安価な料金で利用者を増やしてレベルの高い品質のサービスを提供することが国民の幸福の増進につながるように思う。公共交通機関も原点に帰る必要があると思う。公共交通機関の目的は利益の追求ではないと思う。国民の幸せを安価な料金で提供することにあるのではないだろうか。

 

 都心に住む富裕層の方が地方に住む庶民より安価な料金で公共交通機関が利用できる。所得が高い人ほど交通網の発達した都会に住み、安価な公共交通機関の恩恵を受けられるという社会が結局、少子高齢化社会の中の一極集中を招いているように思う。

 

 新宿御苑は芝生への立ち入り規制もなく、広大な広場に家族連れ、カップル、グループが車座になって談笑している。新宿御苑は桜だけでなく、バラ花壇、プラタナス並木、まだ花を付けていないつつじやあじさいも楽しめる場所だということを初めて知った。

 

 プラタナス並木沿いにベンチが配列されていて、プラタナスの木の下で様々な人たちが語り合ったり、風景を眺めたりしていた。葉も付けていないプラタナスの木の下のベンチはほぼ満席だった。

 

 今度はあじさいの咲く頃に訪れたいと思っている。白井からでも気軽に訪れることができる。車でなく、電車やバスを使って気軽に出かけよう!園内を散策することは肉体的にも精神的にも健康増進につながると思う。