· 

利用者の視点

 

 白井駅北口と新鎌ヶ谷駅を結ぶ二路線が2017年に開業して1年半近くが経過した。ちばにうと京成の利用者数だけの勝敗を見ればちばにうの勝利は間違いない。しかし、利用者のニーズという観点から見ると成功とは言い難い。そして、京成の目的は競争ではなく、排除だったのだから勝ち負けを論じるのは意味がないのかもしれないが、排除という目的でも京成は成功していない。

 

二つの路線は白井市民から見ると必ずしも利用したい路線ではない。白井駅北口の徒歩圏以外の市民にはあってもなくてもいい路線に過ぎない。しかし、それは最初から分かり切ったことだった。ちばにうは千葉ニュータウン中央駅⇔新鎌ヶ谷駅間の2点間を結ぶシャトルバス(直行バス)として始まっており、白井駅北口の停車は副産物に過ぎないからだ。

 

 シャトルバスは千葉ニュータウン中央駅を利用する速達性より運賃を優先する通勤利用者には魅力があるが、日中の需要は限られている。ちばにうの北環状線はそうした日中の稼働率を引き上げるのが目的で特に白井地区の需要に期待していたとは思われない。不足するシャトルバスの需要を補完する路線に過ぎない。その証拠に新鎌ヶ谷駅の北環状線の最終便は19時48分だが、シャトル便の最終便は21時30分であることを見ればわかる。

 

 しかし、この選択自体は間違いではないと思う。北環状線のルートを考えれば20時以降のバスの利用は期待できない。もともと千葉ニュータウン地区の交通ニーズと白井市民の交通ニーズは異なる。千葉ニュータウン地区のニーズは運賃だけでなく、速達性も無視できない。

 

 一方、白井は新鎌ヶ谷駅からの距離が短く、速達性より便数が利用に大きく影響を与える。白井市民にとっては千葉ニュータウン地区への足は1時間に1本程度で十分だろうと思われる。白井市民が千葉ニュータウン地区へ行くニーズとしては日中のパート労働やショッピングが考えられ、運賃が安く行きと帰りの便が確保されていればいい。

 

 一方、都心への起点となる新鎌ヶ谷駅については運賃が安くて本数が多くなければ一般の市民は利用したいと思わないだろう。利用するのは高齢者や車を持たない市民だけだと考えられる。新鎌ヶ谷駅までの直通便が大幅に減便されて不便になったコミュニティバスを現在、利用しているのは高齢者が中心だ。直通便の減便後にコミュニティバスの利用を止めた人は結構、多いはずだ。

 

 今日、都心からの帰りに新鎌ヶ谷駅で19時38分の西白井線に乗った。乗客は25人だった。見た感じ通勤帰りの人が大半だったように思う。大山口一丁目のバス停で5人が降りた。残りの乗客はおそらく西白井地区の住民と思われる。

 

 西白井地区の住民には最寄りの西白井駅までは歩くには遠すぎるので新鎌ヶ谷駅までバスに乗る理由がある。そして、新鎌ヶ谷駅までバスで出ることができれば高額運賃の北総線に乗らずに都心に出られるというメリットもバスを利用する動機になっているはずだ。

 

 一方、京成側から見れば白井工業団地の通勤利用者が乗らない日中と朝の工業団地からの折り返しと夜の新鎌ヶ谷駅からの折り返しの西白井地区の住民の利用が西白井線の需要を補っている構図だ。そしてセブンパークアリオ柏行きの便も西白井線の需要を産んでいる。

 

 19時38分の西白井線のバスに乗り込んだ時に隣のバス停に19時40分始発の北総循環線が停車していた。北総循環線の乗客は3人。そしてアクロスモールの前をイオン側のバス停に向かうちばにうの19時48分発の北環状線が通り過ぎるのが車窓越しに見えた。こちらも乗客は3人。

 

 平日のこの時間は毎日、同じ光景が繰り返されているのだろう。白井市役所がコミュニティバスの新鎌ヶ谷駅直通便を減らしたときの「民間にできることは民間に」という空虚な説明の実態が浮き彫りになっているように思う。

 

 新たに路線を開業した2事業者の思惑が白井市民のニーズとは関係ないところにあることを知らない市民は多いと思う。自分たちの街のことは行政頼りにせずに自分たちで考えて自分たちで行動するべきだと思う。