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西白井線停留所が道路交通法第44条違反の訳(1)

 昨年2月の新鎌ヶ谷駅のコミュニティバスの停留所の移動は不可解なことばかりだ。関心のない人には何が問題なのか分からないだろう。そこで問題を整理してみた。

 

 鎌ケ谷市はホームページで2019年2月にコミュニティバスの停留所を移動することを唐突に公表した。しかし、停留所移動のお知らせは既に市のホームページから削除されているので今となっては正確な公表日時は分からない。お知らせの内容が簡潔すぎて詳しいことは何もわからない。問答無用ということだろうか。

 

<鎌ケ谷市のホームページに掲載されていたコミュニティバスの停留所の移動のお知らせ>

 新鎌ケ谷駅北側駅前広場にある鎌ケ谷市コミュニティバス「ききょう号」のバス停留所は、障がい者乗降スペースと共用として使用されていましたが、コミュニティバス利用者の乗降の際の安全性を考慮し、下記のとおり移動をします。

1.実施日   平成31年2月1日(金曜日)第1便から

2.移動場所 現在位置から北側へ約10m移動

3.その他   路面に表示する区画線の変更は、1月中に予定しています。

4.別添図   鎌ケ谷市コミュニティバス「ききょう号」のバス停位置

 

 移動理由が「コミュニティバス利用者の乗降の際の安全性を考慮」と書かれているだけで具体的な説明がない。どうして事前に市民に停留所を移動することを丁寧に説明できないのだろうか。どこかの国の政府とやり方が同じだ。どういう過程と議論を経て停留所の移動を決めたのか市民にはさっぱりわからない。移動後の停留所が上屋(屋根のない)のない青空停留所だと知ったのは停留所の移動が完了してからだった。そこで昨年5月に熱中症や風雨の対策をどうするのか知りたくて市の担当窓口に問い合わせてみた。

 

 🔗バス停の移動について役所に聞いてみた

 

 問い合わせでわかったことは上屋の設置については何も決まっていないという事実だけだった。しかも、コミュニティバスの停留所の問題なのに地域公共交通会議に諮らず、事業者の利害調整の場である駅前広場利用旅客輸送者連絡協議会で停留所の移動を決めたことがわかった。鎌ヶ谷市のこの連絡協議会についてネットで検索したが、何にも引っかかってこなかった。密室で事を決めたと批判されても仕方がないだろう。

 

 連絡協議会に関する記事は研究者の資料だけだった。運輸政策研究所の研究者の「駅前広場における管理の現状と今後の方向性」と題するプレゼン資料(関連する論文も別に公開されている)に自治体が所有している駅前広場の利用承認形態が掲載されていた。鎌ケ谷市の連絡協議会が実際にどういう運営がされているか確認していないが、おそらく下の図のような組織と考えられる。市にコミュニティバスの停留所の移動の件で聞いたときに停留所の移動については事業者だけでなく、警察も入っており、道路交通法上問題がないという見解だった。

(出所)「駅前広場における管理の現状と今後の方向性」より
(出所)「駅前広場における管理の現状と今後の方向性」より

 かつて新規事業者に駅北口への新規参入を求められたときに停留所の移動には「鎌ヶ谷市地域公共交通会議と新鎌ヶ谷駅駅前広場利用旅客輸送者連絡協議会の開催が必要」と市は説明したそうだから矛盾している。

 

 🔗市民目線で「生活バスちばにう」新鎌ヶ谷駅バス停位置改善を!~新鎌ヶ谷駅バス停位置変更には、「鎌ヶ谷市地域公共交通会議」と「新鎌ヶ谷駅駅前広場利用旅客輸送者連絡協議会」の開催が必要だが、バス停が変わるくらいのことでは、これらの会議を開くことが難しいかもしれない。なお、「連絡協議会」の開催権限は会長である道路河川管理課長にある。

 

 この問題を考えるためには駅前広場の利用状況を知る必要がある。下の図は鎌ケ谷市がホームページに掲載したコミュニティバスの停留所の移動のお知らせの添付資料に現況の利用状況を加筆したものだ。さらに本文の最後に関連の写真も添付してある。

 図を見るとコミュニティバスの停留所の移動後のロータリーのほぼ半分を大手鉄道事業者の系列バス会社が独占していることがわかる。タクシー事業者のタクシー乗り場は2区画なのに3台が恒常的に客待ち(3台目は駐車違反)しており、後ろのタクシー専用降車場は3台客待ちしていると利用できない。

 

 🔗新鎌ヶ谷駅のロータリー内の交通規制を整理してみた

 

 バス事業者も日常的に法令違反を繰り返しており、コミュニティバスの停留所の移動に伴い、西白井線の停留所が道路交通法違反状態に陥っている。市はこの事実を知っていた可能性がある。一時、停留所が無届だった理由の一つに警察が確認していることを挙げていたので問題があれば警察の責任で対応してくれるだろう考えているのかもしれない。道路交通法第44条違反状態は下の図の通りだ。

(注)鎌ケ谷市と白井市のコミュニティバスは「乗合バス」(「コミュニティバスの導入に関するガイドライン」のコミュニティバスの定義より)

 バス事業者は道路交通法第44条による駐停車禁止については普段から積極的に発信しているので言い逃れはできない。そして、恒常的に「決められた停留所」以外での降車(道路運送法違反)を新鎌ヶ谷駅のロータリーで平然と繰り返しているのだからカルロス・ゴーン並みの神経を持った集団だ。

 

 新鎌ヶ谷駅前を通ったときにバスが停車するのを見かけたら注意して見てほしい。あるいは自分の乗車したバスで「決められた停留所」以外の停留所や場所で降ろされたことがないか思い出してほしい。中には近いところで降ろしてくれるなら構わないと考える人もいるかもしれないが、それは事業者による不公正競争を増長し、北総線の運賃のように競争がないために利用者が高額な運賃の負担を強いられることになる。

 

 新鎌ヶ谷駅のバス路線は北総線の高額運賃政策とリンクしていることを認識してほしい。単に法令違反の解消自体が目的ではなく、不公平な競争の監視が利用者の利益につながると考えている。事業者が自分たちの利益を度外視して利用者の利便性を第一に考えて法令違反のリスクを冒してまで駅の改札に近い場所で利用者を降ろすはずがない。

 

 違法行為を止めさせるために詳細な資料を添付して要望書を運輸局に2回提供した。運輸局は違反行為があれば、教えてもらえれば事業者を指導すると繰り返していたが、今になると怪しいものだ。事業者は法令違反の事実を認め、運輸局が指導したことになっているが、いまだに法令違反がなくなっていない。この件については別途ブログで公表する予定だ。

 🔗マイカーで駅前に入られるみなさまへ~お客様の乗り降りについて、路線バスはマイカーと違い、決められた停留所にしか停まることができません。…道路交通法第44条により、バス停留所の前後10mは駐停車禁止となっています。路上駐車だけでなく、停車(人の乗り降りのための短時間の停車や、運転席にドライバーが乗車しているケースも含みます)も禁止されています。バスが停車中の車両などを避け、進路変更をして安全に停留所に発着するためには、実際に停車する位置の前後にかなり広いスペースが必要になります。駅前ロータリー等に停車される場合は、あらかじめバス停留所周辺は避けて下さい。また、バスの発着に支障がある場合は、乗務員から声をかけさせていただくことがありますので、その際は速やかに車を移動して下さるよう、お願いいたします。

 

 既存のバス事業者とタクシー事業者が違法行為を繰り返しているのは自分たちの既得権を守り、拡大したいためだ。バス事業者は新規事業者に対して営業妨害のような行為を行っている。法令違反もイオン側のバス停で営業しているバス事業者の利用者を増やさないためだと考えられる。

 

 既存のタクシー事業者が駐車違反をしてまで3台で客待ちしているのは、タクシー乗り場の後ろに設けられたタクシー専用降車場(降車のみの停車しかできない)を駅に乗入れていないタクシーが利用するのを妨害するためのように見える。

 

 定点観測でわかったタクシー利用状況からするとタクシー乗り場の区画は1台でも利用者に不便をかける可能性は低い。タクシープールも満車になることはあまりなく、足りないという印象はない。

 

 こうしたことからすると利用者のために台数を確保したいのではなく、駅前に乗入れている事業者の既得権を守るために行っているのが3台による客待ちルールだと考えられる。ときどき4台で客待ちしていることがある。4台目が停車している場所はタクシー専用降車場の中だ。降車場の区画にはタクシーの文字が書かれているから知らない人間には4台分の客待ち区画があるようにも見える。

 

 既存のバス事業者は後発の事業者が始めた新しい路線の利用者が増えることを警戒し、後出しで競合するような路線を開業している。彼らは大手鉄道事業者のグループ会社で資金力があり、ICカードが使えない、駅からも遠い停留所の事業者の利用者を奪えると考えていたようだが、成果が上がっているとは言い難い。

 

 運賃競争で体力勝負すれば、彼らが有利だろうが、グループの中に北総線を抱える彼らには安易な運賃競争ができない事情がある。北総循環線を開業したばかりのころは停留所に派手なのぼりを立てて優位性をアピールしていた。しかし、目玉の一つがICカードなら運賃が数円安くなるという運賃比較だったのを覚えている。

 

 🔗赤いのぼり旗

 

 対抗事業者に比べ、停留所が駅の改札から近いことも優位だったはずだが、開業から2年半経った現在も利用者は増えていない。もともと採算性の低い路線だったことが証明されつつある。北総線の利用者に影響があるかもしれないという理由だけの採算度外視の政策が裏目に出ているように思う。

 

 利益に敏感なグループだから運賃を下げてさらに赤字を増やすような営業政策はできないことは容易に想像がつく。一番望ましいのは相手が競争から脱落して撤退してくれることだろう。

 

 一方、新鎌ヶ谷駅への新規参入を防ぐためには停留所の維持が必須だ。ロータリーの占拠率を落とさないという政策は彼らの根本政策であり、現場に課せられた至上命令だろう。彼らは新鎌ヶ谷駅だけでなく、他の駅でも同じようなことをやっている。

 

 運賃競争以外でどうやって相手から利用者を奪うかということが現場の法令違反につながっていると考えられる。その一つの答えがより駅の改札から近い場所で利用者を降ろすということなのだろう。北総循環線と高花線のバスが日常的に”決められた停留所”以外の場所で客を降ろすという法令違反を平然と繰り返しているのはこうした背景があると考えられる。

 

 かんぽ生命の営業職員がノルマ達成のために違法行為に手を染めたのも営業目標必達の上層部からのプレッシャーが一番の要因だったようにバスのドライバーにも何かしらのノルマが課せられている可能性がある。

 

 法令違反を犯しても個人責任が問われないのなら、査定に響くノルマの達成を社員は優先することになるだろう。企業文化が大きく現場に影響している可能性がある。保険会社の中には営業ノルマを規範だと教えている企業があると聞いたことがある。

 

 こうした見解は単なる憶測ではない。次のブログで明らかにする彼らの違法行為の定量的な数字を見れば、多くの人が納得すると思われる。定量的な証拠もなく、相手を批判するようなことをするつもりはない。

 

 今回、役所に事業者の法令違反に対する改善指導を求めたが、道路交通法違反については所管は警察だから見解を述べられないというような対応だった。彼らは逃げ場があれば自ら動かない。おそらく、警察に道路運送法の問題を指摘しても所管は国土交通省だというキャッチボールが行われるだけだろう。規制緩和だとか散々、喧伝しておきながら役所の縦割り行政の問題は彼らの事なかれ主義で何も変わっていない。彼らは自分の尻に火が付くまで動かない。だから、誰かが彼らの尻に火を付ける必要がある。そのためには客観的な証拠を彼らに突きつける必要があると考えている。

西白井線とコミュニティバスの停留所の区画と駐停車禁止場所
西白井線とコミュニティバスの停留所の区画と駐停車禁止場所
停留所側から見た区画線
停留所側から見た区画線
西白井線の停留所の駐停車禁止の警告
西白井線の停留所の駐停車禁止の警告
北総循環線の停留所の駐停車禁止の警告
北総循環線の停留所の駐停車禁止の警告
駐停車禁止の警告がないコミュニティバスの停留所
駐停車禁止の警告がないコミュニティバスの停留所