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北総線の値下げ発表~来年10月1日から

(2022/01/17 更新)

 

 北総鉄道は決算発表で「当社線の運賃値下げの可能性の検討に着手する」と唐突に運賃値下げを表明していたが、今回も唐突に値下げの実施が発表された。19日付で「🔗北総鉄道北総線と京成成田スカイアクセス線の旅客運賃改定」を国土交通大臣に届け出たことが報じられている。

 

 不思議なことに普段、無料配信記事の場合、頭の数行しか公開しないことが多い千葉日報が今回の北総鉄道の値下げ記事を無料で全面公開している。ひょっとすると北総鉄道の広告なのではないかと疑いたくなる。速報となっており、記事は北総鉄道のプレスリリースを書き写したような内容だ。メディアとしての分析はゼロ。

 

 🔗【速報】北総鉄道、来年10月運賃値下げ 通学定期64・7%減、初乗り210円→190円に(無料公開)

 

  産経新聞の記事も自治体の長のコメントを追加した程度の記事だ。

 

 🔗北総鉄道が来年10月値下げへ 通学定期は3分の1に~沿線自治体からは、歓迎の声が上がる。印西市の板倉正直市長は「北総鉄道の御英断に敬意と感謝を示すとともに、市としても一層沿線の活性化に取り組む」とコメント。白井市の笠井喜久雄市長は、「早期の決断に感謝。市民にとって利便性が高まる。経営を圧迫しない範囲でのさらなる値下げと、安全対策にも努めて頂きたい」とした。

 

 白井市長の「”経営を圧迫しない範囲で”のさらなる値下げ」という絶妙のコメントは事業者に配慮しながら暗に値下げ内容が不十分だということを市民にアピールするための保身なのだろう。今後、市長が本当にさらなる値下げを求めることはないだろう。

 

 鉄道プレスネットの記事はきちんと北総線の運賃値下げの内容を分析している点で評価できる。

 

 🔗北総鉄道「値下げ」来年10月から 最大105円、通学定期は京成本線と「同額」に

 

 記事では通学定期について「京成電鉄の本線・東成田線・押上線・金町線・千葉線の通学定期と同額で設定されており、これにより大幅な値下げとなる。」と記されている。

 

 一方、普通運賃と通勤定期運賃について「初乗り運賃(1~3km、切符210円・ICカード203円)は15~20円値下げして切符190円・ICカード188円に。それ以外の距離帯は中距離帯(12~14km)を中心に値下げし、値下げ幅は最大で切符100円・ICカード105円になる。」と記されている。

 

 ちなみに、西白井⇔新鎌ヶ谷1駅間の運賃は310円(ICカード309円)から280円(ICカード279円)に30円値下げされる。しかしながら、8月に西白井⇔新鎌ヶ谷間のコミュニティバスの運行が廃止されて困っている高齢者が「市民にとって利便性が高まる」と評価することはないだろう。

 

 🔗 2021年8月2日からのナッシー号のルート改正の不都合な事実(1)

 

 記事では「一方、普通運賃の値下げ幅はそれほど大きくない。中距離帯の12~14kmでは100円の値下げになるが、それでも値下げ後の金額は480円で、京成本線のほぼ同じ距離帯の普通運賃(11~15km、260円)の1.7倍以上だ。さらに中距離帯以外では値下げ幅が小さくなるため、北総線全線の京成高砂~印旛日本医大間では20円の値下げにとどまる。普通運賃に準じて値下げされる通勤定期運賃も同様で、1カ月の場合は12~14kmの距離帯で4720円値下げされるのに対し、30~33kmでは値下げ幅が1340円。12~14kmでも京成本線の同距離と1.9倍程度の開きがある。」と指摘している。

 

 今回の運賃値下げ内容はある意味、予想通りと言える。以前のブログ「🔗北総線の値下げに関する東洋経済の憶測記事~京成のいいとこ探し」で私は「大幅な値下げがあるとしてもダメージの少ない通学定期の値下げが中心になる可能性が高い。通学利用者は少子化で今後、減っていくだろうから値下げによる経営への影響は少ないと考えられる。その場合でも補助金が前提になる可能性がある。」と書いた。

 

 今回の通学定期の値下げが自治体からの補助金が見返りになっていないかどうか注視する必要がある。

 

 現在、コロナ感染者が急速に減少しているが、第6波のリスクも残っており、経営上の不確定要素が残っているこの時期になぜ運賃の値下げの届出をしたのだろうかという疑問が残る。これまでは金利動向、少子高齢化の進展等の将来の不確定要素を列挙して値下げができないと主張してきた会社の突然の豹変は身を切る改革なのだろうか。それともちょっとした出血で済ませて逃げ切るつもりなのだろうか。資本不足という根本問題は先送りしたいのだろうか。

 

 自治体や国からの補助金等の支援の合意が前提になっているのだろうか。北総鉄道は平成25年(2013年)10月25日の「🔗北総線の現行運賃水準の維持には補助金継続が必要!!~北総線運賃問題対策協議会へ申し入れ」で運賃の値下げのためには補助金が不可欠だと主張している。

 

 申し入れの中で平成47年(2035年)の長期資金収支の最大不足額295億円のさらなる悪化も考えられると主張して補助金を前提にした過去のわずかな値下げを反故にした経緯がある。北総鉄道は今回の運賃値下げと長期資金収支不足問題の関係について説明責任を果たすべきだろう。

 

 🔗北総鉄道、来年2月に運賃値上げ…運賃低減の補助金が終了

 

(関連ブログ)

 

 👉東急電鉄の値上げと西白井駅の運賃~初乗り運賃区間(1~3㎞)の次の区間(4~5㎞)が5割増しに設定されていることに気が付いた。他の区間の上昇率はほぼ20%以下なのでその異様さがわかる。つまりこの区間でベースが底上げされていることになる。この区間の上昇率を適正な水準にすることが先決だろう。ちなみに、2区間目を東急電鉄と同じ4キロ刻みにしたら、上昇率は現行で85%増しになる。改定後でも75%増しだ。東急電鉄の改定後の2区間目(上げ幅23円)の上昇率の2.6倍になる。北総線の10月からの改定では初乗り区間と最終区間を除けば最も下げ幅が少ないのもこの2区間目(下げ幅30円)だ。

 

 

 (追記)千葉日報の北総鉄道運賃値下げに関する翌日の記事はやはり有料記事だった!