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ちょうちん記事2~誰も驚いていない北総鉄道の運賃値下げ!

 2月24日の東洋経済オンラインに掲載された『北総鉄道「運賃値下げ」、乾坤一擲の勝負の行方 通学定期の下げ幅64.7%には誰もが驚いた』という業界誌の鉄道ジャーナル編集部が書いた記事に驚いた。

 

 中身は北総鉄道の言い分をそのままを記事にしたちょうちん記事というより番宣のような運賃値下げの周知広告だ。北総線の車内には派手な運賃値下げをアピールするつり革広告が掲示されているが、誰も見ていないのではないだろうか。

 

 沿線住民の乗客からしたら茶番にしか見えない。喜んでいるのは通学生を持つ親くらいだろう。通学定期代が他線並みになったから千葉ニュータウン地区にこれから移り住もうと考える人がどれだけいるだろうか。

 

 記事は「ニュータウンの鉄道は住民が減って町が衰退すると鉄道自体も立ち行かなくなる。そこに近隣の他の住宅地との競争も生まれる。そのような環境で持続的に成長するには、新しい人に選ばれ、定着できる沿線にしなければならないのである。」と書いている。

 

 先住民を新しい住民に入れ替えるつもりなのだろうか。さんざん、高額の運賃を負担してきた沿線住民のことは結局、何も考えていないのだろう。年貢が納められる働き盛りの住民の住替えを狙っているのだろうか。

 

 今頃、そんなことを言っても遅すぎる。これまで将来的な少子高齢化による沿線の衰退を値下げできない理由の一つに挙げてきたのはどこの誰だっただろうか。

 

 有利子負債の問題も京成の貸付金が北総鉄道の剰余資金(消費寄託金)として回収されている実態からすれば北総鉄道が有利子負債として公表している数字は大きく水増しされていると言わざるを得ない。

 

 マスコミは、北総鉄道の実態を掘り下げる記事を書くことを嫌っている節がある。地雷を踏みたくないのだろう。真実を追求する調査報道より広告収入に影響しかねない大企業を正面から批判する記事を書きたくないのだろう。揉み手で大企業に擦り寄るメディアが多い。知る権利を守るために新聞は消費税の軽減税率が適用されたはずだ。こんなことだからデジタル化で紙の新聞が絶滅危惧種の仲間入りする日も近いのではないだろうか。デジタル化しても有料で購読しようと思う国民がどれだけいることだろうか。

 

 彼らは通学定期の大幅値下げを大きく取り上げる一方で千葉ニュータウン鉄道(実体のないペーパーカンパニー)の累積損失を理由とした不条理な線路使用料問題を深く追求しようとしない。京成電鉄と千葉ニュータウン鉄道の損益を連結ベースで見れば累積赤字が作られたものであることはすぐにわかるはず。

 

 成田空港線の認可申請で行われた運輸審議会の議事録に鉄道局が委員に対して行った説明の中で千葉ニュータウン鉄道の累積損失が解消した時点で支払方法を見直すようであると記載されている。ただ、鉄道局のずるいところは「ようである」と他人事のような言い方で責任逃れをしていることだ。

 

 北総鉄道は通学定期の大幅値下げで不都合な問題から沿線住民の目を反らそうとしているのだろう。今後もまともな情報開示が行われることはないだろう。

 

 記事は「将来に生きていくための決断」という小見出しで「今、脚光を浴びて利用が伸びているのは千葉ニュータウン中央駅と印西牧の原駅に集中。それに対して西白井―小室の駅圏では伸びが止まってしまっている。そのため将来に向けて白井市とは昨年3月、地域活性化に関する協定を結んだ。以前は北総線の高運賃を巡り、一部の沿線自治体との関係が冷え込んだ時期もあったが、やっとこのような関係性も築けるようになってきた。」と書いている。

 

 肝心の10月から実施される運賃の値下げは、新鎌ヶ谷駅から一駅目の西白井が30円、白井が50円、小室が70円と焼石に水程度だ。西白井駅前に最近、完成したマンションで鉄道利用者が増えることを期待しているのだろう。そして、もう1か所、北口側にもマンション建設用地と思われる土地が確保されている。

 

 これまでの北総鉄道の決算報告書の増収分析には必ず新しく分譲されたマンションが挙げられていた。千葉ニュータウン中央地区の分譲が減って焦っているのかもしれない。印西牧の原地区は、人口が増えたかもしれないが、駅前や464号線沿いの巨大モールのスラム化が進行している。その事実を伝えるマスコミの記事はほとんどない。

 

 白井市と事業者の関係が改善しているように見えるのは、元々、事業者の意向に沿って動いていた行政の対応だけで北総鉄道に反感を持っている市民は少なくない。副駅名、不要なガラス張りの待合室、訳の分からないラッピングバスで事業者と市の関係をアピールしているのかもしれないが、誰のため施策なのだろうか。

 

 市民が望んでいるのは日々の交通利便性の改善だ。コミュニティバス(ナッシー号)同様、一般の市民がラッピングバスを利用することは期待できないだろう。鎌ヶ谷大仏駅方面をつなぐバスの利用者のイメージが湧かない。事業者側の都合だけに合わせた市民無視の施策は止めてほしい。

 

 記事は「成田スカイアクセス線開業を迎えた頃から(北総鉄道の輸送人員が)10万人に迫り、2015年度に突破した。収入(運輸収入と線路使用料)も1991年度とコロナ禍直前の2019年度の比較で3倍以上となった。」と書いている。

 

 しかし、2019年度の運輸収入(12,678百万円)は成田空港線開業前の2009年度の運輸収入(13,101百万円)を未だに下回ったままだ。線路を貸したのに自社の運輸収入が減ってしまうなどということは本来あり得ないことだ。

 

 そもそも「通学定期の下げ幅64.7%には誰もが驚いた」と書いているのに驚いている利用者のコメントをなぜ載せないのだろうか。

 

 沿線利用者に取材して記事を書けばもっと説得力がある記事が書けたのではないだろうか。それとも取材する予算がなかったのだろうか。

 

 「来年、下の子が市外の私立高校を受験する予定で北総線での通学を視野に入れていました。今回の値下げには驚くとともに経営者の方の英断や市長の事業者への働きかけにとても感謝しています。都内の大学に通っている上の娘の通学費も大幅に下がることになるのでとても助かります。」といった沿線住民からの声ならすぐに集められそうだ。

 

 しかし、誰もが驚いたはずの北総線の値下げを話題にしている人を私は目撃したことがない。おそらく、今回の値下げは通学生を持つ親や北総鉄道の値下げを主張してきた議員以外の沿線住民のこころには響いていないことだろう。驚くどころか、想定内だった市民の方が多いのではないだろうか。

 

 この記事には、書いている側の熱意が感じられない。きっと、やっつけ仕事なのだろう。最近は、利害関係を優先した記事が多い。ホリエモンが、かつて金がすべてと言っていたことがある。利益誘導に弱い人々が世の中にたくさんいるのだろう。