前回の「鉄道統計年報の正誤表が教えてくれること~京成と国交省の悪だくみ(1)」というブログを書いて北総鉄道の情報公開の劣化を改めて再確認した。
私は、過去に何度も鉄道局の担当者に北総鉄道の情報開示姿勢について指導するよう求めたことがある。上限運賃制度は事業者の「情報公開の促進」を制度の前提として設計されているからだ。しかし、まるで効果がなかったどころか、北総鉄道がホームページに掲載している決算報告の情報量が京成との運賃収入配分以降、極端に減少している事実に呆れてしまった。情報公開の促進とは真逆の方向に向かっていたのだ。
しかし、国交省のガイドラインには「公開資料の構成及び具体的な内容は各事業者毎に創意工夫して行うものとする。」と書かれているので「事業者の創意工夫に任されているので、北総鉄道の決算の開示内容が適切でないとまで言えない。」という便法になるのだろう。値下げ裁判の公判ではこうした言い逃れとも言えるフレーズが多用されていた。森友学園問題の文書改ざんは忖度の問題だけではなく、元々あった役人の責任回避のための隠蔽体質が起因しているのだろう。
やはり、鉄道局は、天下りを通じて事業者と一体化していたことを今回の件で思い知らされた気がする。事業者と一緒になって都合の悪い情報を隠蔽していたと思わざるを得ない。おそらく、沿線住民が起こした値下げ裁判に対する対策の一環でもあったのだろう。
改めて、正誤表で輸送人員を修正した決算年度の内容を精査してみた。
1. 修正内容 輸送人員 (誤) 37,952千人 前年比 102% → (正) 35,313千人 前年比 95%
2. 決算書の説明 修正前の(誤)の数値が使われている!
「 当期の輸送人員は、定期旅客は前年同期に比べ1.8%の増。定期外旅客は成田スカイアクセス開業によるアクセス特急停車駅(東松戸駅・新鎌ヶ谷駅・千葉ニュータウン中央駅・印旛日本医大駅)を中心に、新規の空港需要及び都心方面の利便性向上が寄与し、前年同期に比べ3.1%増となり、定期・定期外全体では37,951千人と前年同期に比べて817千人、2.2%の増加となりました。一方で旅客運輸収入は、輸送人員増加があったものの、成田スカイアクセス(京成電鉄㈱:第2種鉄道事業者)との運輸収入配分並びに運賃値下げにより118億4千5百万円と、前年同期に比べ12億5千5百万円、9.6%の減収となりましたが、運輸雑収は千葉県・沿線自治体からの運賃値下げの一部補てんにあたる負担金、成田スカイアクセスの業務受託手数料収入があり、これに京成電鉄㈱からの新たな鉄道線路使用料収入を加えた営業収益は、3億3千3百万円、2.2%増の151億6千6百万円となりました。」
3. 疑問 大幅な運輸収入の減収の原因が収入配分だけでなく、補助金付きの軽微な運賃値下げにもあるかのような言い回しになっている。現在まで決算で公表した輸送人員の訂正が公表されていない。
1. 修正内容 輸送人員 (誤) 38,400千人 前年比 101% → (正) 34,452千人 前年比 98%
2. 決算書の説明 修正前の(誤)の数値が使われている!
「 当期の輸送人員は、38,400千人と前期に比べて448千人(1.2%)の増加となりました。営業収益は、旅客運輸収入112億9千1百万円に、京成電鉄㈱からの線路使用料収入のほか、成田スカイアクセスの業務受託手数料収入、千葉県、沿線自治体からの運賃値下げの減収補てんのための負担金収入を加えて154億2千6百万円と、前期に比べて2億5千9百万円(1.7%)の増収となりました。」
3. 疑問 2009年度が6頁、2010年度が5頁あった決算報告書が2011年度以降、僅か3枚に減少している。現在まで決算で公表した輸送人員の訂正が公表されていない。
1. 修正内容 輸送人員 (誤) 39,621千人 前年比 103% → (正) 35,507千人 前年比 103%
2. 決算書の説明 修正後の(正)の数値が使われている!
「 当期の輸送人員は35,506千人と、前期に比べて1,054千人(3.1%)の増加となりました。営業収益は、前期に比べ3億2千7百万円(2.9%)増の116億1千8百万円となった旅客運輸収入に、京成電鉄株式会社からの線路使用料収入のほか成田スカイアクセスの業務受託手数料収入、千葉ニュータウン鉄道株式会社からの負担金収入、千葉県・沿線 自治体からの運賃値下げによる減収の一部補填にあたる負担金収入などを加えて159億2千2百万円と、前期に比べて4億9千6百万円(3.2%)の増収となりました。」
3. 疑問 修正により4,114千人も輸送人員が減少しているのに対前年比(103%)が変わっていない。通常、鉄道統計年報は、事業者の決算報告から1年以上遅れて公表されるのに正誤表の修正後の(正)の数値を北総鉄道が決算で使用しているという矛盾が生じている。今回改めて当時の資料を調べ直してみたら2012年度鉄道統計年報の公表前に鉄道局に輸送人員を確認していたことがわかった。そのときに得た情報は修正前(誤)の数値だった。それで、7月上旬に北総鉄道が公表していた決算の数値と9月上旬に鉄道局のヒアリングで得た数値が異なっていることに気が付いたことを私は思い出した。ということは、北総鉄道は決算で修正後の(正)の数値を公表し、後日、鉄道局に提出した書類を訂正したことになる。しかし、そうだとすれば、北総鉄道は虚偽の報告を国土交通省に届け出たことにならないのだろうか。鉄道統計年報の数値は、そんな簡単に訂正可能なのだろうか。鉄道事業者は、毎事業年度の経過後100日以内に事業報告書(ただし、事業実績報告書の提出期限は5月31日)を管轄の運輸支局に提出することになっている。事業報告書の訂正を先送りして決算報告で先に訂正後の数値を公表するような行為が許されるのだろうか。国土交通省が鉄道統計年報を公表するのは最低でも決算から1年以上先だ。そうすると国土交通省は決算から1~2年後に鉄道統計年報で修正前の数値を公表し、その後、北総鉄道から提出された訂正報告を基に正誤表を作成して数値を修正したのだろうか。2010・2011年度の正誤表には訂正日が記載されているが、2012年度の正誤表には訂正日が記載されていないのはなぜなのだろうか。国は、北総鉄道の大株主だから株主総会後の7月には決算と事業報告書の輸送人員数の相違を把握していたはずだ。北総鉄道と鉄道局のやることは、いつも辻褄が合わないことばかりだ。事業者の決算だけでなく、国の統計も当てにならない。
(注)鉄道統計年報のサイトの頭書に「3.本年報の統計数値は,鉄道事業,軌道事業の実績報告,事業報告及び鉄道輸送統計年報を基礎資料としております。」と記載されている。
そのうちに鉄道統計年報の公表もやめる日が来るのかもしれない。彼らには、いつでもいくらでも言い逃れができる。不利な情報は、非公開か、黒塗りするのが彼らの上等手段だ。あったこともなかったことにすることに何も感じないのだろう。世の中、人の痛みのわからない無痛人間が再生産され続けている。
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