· 

鉄道統計年報の正誤表が教えてくれること~京成と国交省の悪だくみ(6)

 

 

 「鉄道統計年報の正誤表が教えてくれること~京成と国交省の悪だくみ」についてこれまで(1)~(5)の記事を書いた。敢えて公表されているアクセス特急の収入配分の取り決めを無視して鉄道統計年報のデータを基に分析してみた。理由は鉄道局や京成が発表する情報が信用できないからだ。

 

 今度は(1)~(5)の分析を基に問題を再整理してみた。

 

 私の推測は次のようになる。

 

〇 鉄道局と京成(以下、彼らと呼ぶ。)は最初に線路使用料の定義を決定

  ・成田空港線開業前に鉄道局は線路使用料に決まった定義はないと説明

  ・いつものように部内のミーティングで想定問答を行い、線路使用料の定義を検討

〇 彼らは線路使用料の定義に基づき、京成が負担する線路使用料を算出

〇 北総線とアクセス特急の運行本数から収入配分の基本分配率を決定

〇 乗り換わりルールを試行錯誤で決めて収入配分が線路使用料に近くなるように基本分配率を調整

〇 アクセス特急の運行を北総鉄道に委託して運輸収入と輸送人員のデータを一元的に管理

   ・成田スカイアクセスの業務受託手数料が運行経費の実費の可能性がある

〇 北総鉄道が管理しているアクセス特急を含めた運輸収入に決定した分配率をかけて収入配分を実施

〇 鉄道統計年報の成田空港線のデータからスカイライナーの特急料金を除外

〇 予定した線路使用料を収入配分が上回るときは京成が追加線路使用料を負担する

〇 収入配分の割合に応じて輸送人員を北総鉄道と成田空港線に配分

  ・運輸収入と輸送人員の統計上の整合性を保つためにはこれ以外の方法が思いつかない

  ・改札を通らずに乗り換えられるため、物理的に2路線の輸送人員を分別することは事業者でも不可能

  ・訂正表による修正は収入配分後の北総鉄道の輸送人員数をこっそり修正するのが目的だったと考えられる

  ・あるいは平成24年度の統計データは訂正表作成前に既に修正されていた可能性がある

  ・外部からデータの整合性を指摘され、指摘時(訂正日:平成28年12月19日)に平成22・23年度を修正

  ・平成24年度の統計データは既に修正後の数字になっていたため、訂正日不明の訂正表だけを作成

  

 以上のように考えると鉄道統計年報の訂正表の意味が理解できる。

  

  京成本線の延伸と考えられる成田空港線を高砂から成田空港までの単独路線として認可申請したのは、スカイライナー事業に対する京成のリスクヘッジと収益基盤の維持だったと考えられる。

 

  コロナ禍により大手鉄道会社(京成を含む)が軒並み赤字に転落しているのに北総鉄道は、2020年度決算で運輸収入が25%以上減少しても営業利益が22.1億円、経常利益18億円、当期純利益12.6億円を計上しており、京成グループの中で最も安定して利益が出る会社であることがわかる。

  

  北総鉄道は利用者が増えなくても、コロナ禍で運輸収入が大幅に減少しても利益が出る体質であることがわかる。収益の基盤になっているのは皮肉にも北総鉄道がことあるごとに挙げている巨額の債務なのだから呆れてしまう。

  

  鉄道運輸機構の債務は金額は大きいが、通常ではあり得ない元利均等償還方式(鉄道運輸機構自身の借入金の調達は通常の元金均等償還方式)が取られており、償還期間の前半は利息ばかり払わねばならないため、ピーク時の支払利息は60億円以上あったが、現在の支払利息は10分の1近くになり、元本は400億円近くまで減少しているはずだ。平成10年の北総鉄道の値上げはピークだった支払利息が大幅に減少して行く直前の駆け込み値上げだった可能性がある。

  

  だから、私は北総鉄道の運賃はこれ以上上げることができない限界運賃だと思っている。一度認可された上限運賃はその後、チェックされることもなく維持されるという上限制運賃の欠点を利用したのではないだろうか。値下げをしても届け出だけで事業者はいつでも値上げができる。電気料金と同じ総括原価方式(大手鉄道事業者とは異なる)が適用されており、すべての経費を運賃に転嫁可能だ。上場会社でないので経営の自由度が高いが、その分、経営の透明性が低下する。

  

  元金の返済は毎年30億円程度だが、利息は毎年、減少し続けている。営業外費用が2年連続で4億円以上減少しているのはそのためと思われる。鉄道運輸機構の債務は機構自身の調達資金の借換え時に見直されるが、大元の借入は固定金利なので大きく支払利息が増加するリスクはない。決算情報を見ていて気が付いたのだが、運輸収入と輸送人員の比較表には前年実績と増減の欄がないのに比較損益計算書は実績と増減が表記されている。ご都合主義が甚だしい。鉄道局が認めている”創意工夫”で情報操作が行われている。