10月からの北総線の値下げについて初乗り運賃の値下げを強調する人がいるので実際に初乗り運賃が適用される駅を調べてみた。その結果、千葉ニュータウン地区以外のすべての駅が次駅まで初乗り運賃で乗れることがわかった。しかし、肝心の千葉ニュータウン地区は西白井駅⇔白井駅と白井駅⇔小室駅しか初乗り運賃で乗車できない。
北総線は、もともと千葉ニュータウン地区の都心への足だ。千葉ニュータウン地区では鉄道は北総鉄道しかない。だから北総線の高額運賃の値下げに対する関心も高い。かつて、通学定期の補助を行った自治体は千葉ニュータウン地区の自治体のみで千葉ニュータウン地区以外の沿線自治体には代替線が存在するため、通学定期の補助を実施した自治体はない。
しかも、千葉ニュータウン地区の入口の西白井駅までの1駅が初乗り運賃で辿り着けない。もし、新鎌ヶ谷駅と西白井駅の営業キロがもう少し短ければ、初乗り運賃が適用されただけでなく、新鎌ヶ谷駅から千葉ニュータウン中央駅までの各駅の運賃キロがすべてワンランク下になっていたことになる。
営業キロは実測とされ、『駅長室と駅長室の間を線路にそって計測し、その数字を元に運賃計算用の距離を定めた。これが「営業キロ」である。運賃は駅間の「距離」で決まるのではなく「営業キロ」によって決まるというわけだ。』と説明されているが、例外も多いという。
新鎌ヶ谷駅と西白井駅間の営業キロは、3.1㎞となっているが、営業キロは100m単位で切り上げになっているので実際の端数の距離は20mかもしれないし、99mかもしれない。あるいは、たとえ営業キロが異なっていても「営業キロの設定は鉄道事業者の裁量の範囲内」という最高裁の判例が既にあるそうだ。事業者の良識に委ねられているということか。
もう一つ怪訝に思っていることがある。それは新鎌ヶ谷駅と西白井駅間を除けば、新鎌ヶ谷駅から千葉ニュータウン中央駅までの各駅間の営業キロにはいずれも端数が付いておらず、きれいにジャストの数字になっていることだ。他の駅間はすべて端数が付いている。
偶然に3つの駅間だけジャストの営業キロ数になることは考えにくいので何らかの意図で調整が行われたことは間違いないと思う。それが鉄道の設計段階なのか運賃申請段階なのかは知りようもない。北総線のことを調べるといつもこうした腑に落ちない疑問に突き当たる。痛くもない腹を探られるのを避けるため情報公開を抑制しているのだろうか。裁量の余地があるなら、新鎌ヶ谷駅と西白井駅間もジャスト3㎞に調整するという判断もあり得ただろう。
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要するに事業者の思惑だけで運賃の設定が可能だということだ。運賃の認可がセレモニーにすぎないことは成田空港線の認可で既に証明されている。西白井駅までの運賃に問題があると事業者が考えれば、いつでも運賃を変更することができるが、営業収支上から運賃を下げたくないと事業者が考えていれば運賃が下がることはないだろう。現在の鉄道事業法は事業者の事業継続と裁量を保証するためにあるように見える。
鉄道は電気と同じインフラだから、事業継続が最優先という大義名分がある。しかし、電気も現在は、利用者が事業者を選択できる時代だ。残念ながら、千葉ニュータウン地区の沿線住民は鉄道を選択することはできない。不満なら乗らないという選択しかない。そういう選択をするべきなのかもしれない。