10月から北総線の運賃の値下げが実施され、月初に単発のニュースがメディア各社から発信されたが、ほとんどの記事は概要を伝えるようなつまみ食いの記事ばかりだった。
大手新聞の記事が大して内容がないことがわかることがある。それは、自分の身の回りのことを記事にしたときだ。単なるプレスリリースを要約しただけの記事もある。発表側の内容をそのまま伝えるなら広告記事とあまり変わらない。しかも、大企業の発表した内容に深く突っ込まない傾向のあるメディアの記事は甘いものが多い。だから、読者はこうした記事を割り引いて読む必要がある。親会社が京成の北総鉄道のニュースもこの手の記事が多い。
最近は、ネットで情報を検索しても新しい記事はほとんどなく、北総鉄道の50周年記念キャンペーンのPR情報くらいしかヒットしない。
これまで選挙の度に重点政策として北総線の値下げを掲げてきた議員たちが与野党関係なく、最近は市民に対してまったく情報を発信していない。まるで、談合でもしているかのように今回の値下げについての彼らの考えがまるでわからない。やはり、彼らの主張は選挙対策にすぎなかったのだろう。
事業者と行政の間に北総線の値下げについて市民に言えないような裏取り決めでもあるのだろうか。例えば、値下げの見返りの補助金の支出が決まっていたりすることはないのだろうか。見ざる聞かざる言わざるを決め込んで後でバレても市民のために仕方がなかったと弁明するつもりだろうか。
真偽のほどはわからないが、「北総鉄道では長年高額だった運賃の打開策として沿線自治体の鎌ヶ谷市や白井市が補助金を拠出することにより値下げを図ることとした。」と書いている記事を目にした。記事が掲載されて話題になった形跡はない。フェイクニュースなら問題になってもいいはずだ。
過去には沿線自治体は値下げ補助金や通学定期の運賃据え置き(10年間)の見返りとして耐震補強のための補助金を負担させられている。今回の通学定期の値下げと10年間の運賃据え置きの取り決めの関係については何も情報が公開されていない。
北総鉄道(と言うより京成)は、これまで値下げしてやるという横柄な態度で一貫してそのための補助金が不可欠という主張を繰り返してきた。具体的な長期資金収支不足まで根拠にあげていた。長期収支資金不足と累積赤字の解消は関係ないはずだ。長期収支資金不足を示した北総鉄道の文書のタイトルにはビックリマークが2個も付けられ、品性が疑われるような内容だった。国や県の威光を笠に着て沿線自治体を恫喝するような態度に呆れていた。
👉運賃問題で北総鉄道が反論…「現行運賃維持なら補助金継続を」
👉北総線の現行運賃水準の維持には補助金継続が必要!! 北総線運賃問題対策協議会への申し入れ(平成25年10月25日)
得てして威張る人間は梯子を外されると態度をコロリと変えることがあるが、「9月中旬に毎日新聞の取材に応じた北総鉄道の室谷正裕社長は『高い運賃を支払っていただくのはずっと心苦しかった』と率直に認めた上で、『若い世代を呼び込むまちづくりを進め、活性化によって鉄道会社の利益にもなる循環に期待したい』と語った。」と毎日新聞が報じている。
旧統一教会のような強硬な主張を繰り返してきた事業者が一夜でいい人になったような印象だ。そうですか、これまでのことは水に流していっしょに街づくりを進めましょうというのが市、議員、北実会の対応のように感じられ、どれだけの沿線住民が彼らの言動を信じているだろうか。
北総線の値下げを長年にわたって強く主張してきた議員が今や北総鉄道の室谷正裕社長のことを絶賛している。しかし、議員が過去の耐震化補強工事の白井の負担に強く反対していたことを思い出す。
市民派を標榜して北実会と共に北総鉄道の大幅な運賃の値下げを主張して市民を誘導してきた経緯からして今回の値下げについて自治体の補助金の負担がないことを明確にする義務が彼らにはある。
昨年8月のナッシー号(コミュニティバス)のルート改正に伴うコロナ禍の1.5倍の増便による経費とその後の運行状況等の実績についても白井の議員は誰一人として市民に報告していない。次の選挙で市民派だからという理由で投票するわけにはいかない。情報公開に後ろ向きの議員はいらない。
最近の政治家は勘違いしているように思う。議員の仕事は自分の自己実現のためにあるのではない。市民の暮らしを改善するための施策を考え、提案し、行政が市民のために機能するように監視するのが仕事のはずだ。勝手な判断で市民のためだと主張するような議員はいらない。
ところで前記「北総線運賃問題対策協議会」と「🔗北総線沿線地域活性化協議会」を私は最近まで混同していた。市のホームページに「北総線沿線地域活性化協議会は、北総線及び沿線地域の活性化を図ることを目的に、まちづくりや地域の賑わいの創出などの事業を鉄道事業者と沿線地域が連携して実施するため、平成27年度に設立されたものです。本協議会では、沿線自治体等が実施する事業の後援や北総線に関する情報提供等を行っております。」と記載されている。北総線運賃問題対策協議会を骨抜きにしたのが新しい協議会の実態なのだろうか。運賃問題がいつの間にか沿線地域活性化に置き換わってしまったようだ。
県、沿線自治体6市、北総鉄道の他にオブザーバーとして国土交通省関東運輸局、京成電鉄株式会社、千葉県企業土地管理局、独立行政法人都市再生機構も加わっている。何のことはない株主で構成されたお仲間クラブのように見える。
最近、始まった🔗北総線沿線活性化トレイン(令和4年8月31日から令和5年2月28日まで)という名前のラッピントレイン事業もこの協議会が主体となって行われている。
この間は、西白井駅の副駅名にかこつけた競馬学校前に停車するちばレインボーバスのラッピングバス(令和4年2月25日から)の発表もあった。
ラッピングトレインとラッピングバスが街づくりに貢献するとはとても思えない。結局、実態は事業者への経費補助ではないのだろうか。とりわけ、ラッピングバスは運行経路からして一般の市民が目にすることはほとんどないのではないだろうか。ラッピングバスに行き会って白井の良さを感じる市民がいるとは思えない。
コミュニティバスの無理筋の増便と同じで市民から反発が出る可能性のある特定の事業者への直接的な経費補助を避けるというのが市の奇策なのだろう。ラッピング広告は、事業者側からは経費の掛からない実入りのいい商売だ。増便がコミュニティバスの運行をしている乗り合いバス事業者の支援が目的だとしたら増便後に2人以上乗っているのを目撃したことがないコミュニティバスの運転手は肩身の狭い思いをしているのではないだろうか。
電車のラッピング広告の費用を調べて見た。京成の車体広告費用は8両1編成で200万円/月程度のようだ。半年で200万円×6か月=1,200万円程度か。費用が公表されていなので実際の金額は不明だ。県と6市とで費用を分担するから費用を公開しなくても赤信号みんなで渡れば怖くないの類なのだろうか。
👉電車のラッピング広告の料金が知りたい! あなたのよく使っている路線のラッピング広告はいくら?
(追記)実際の契約金額は不明だが、北総鉄道の車体広告費用が電車広告.comに掲載されていた。
京成・北総 北総線 車体広告
1,500,000円(消費税別途)/1ヵ月
最近の北総線の値下げに関する記事のリンクを最後に添付した。住民の声を拾った記事はほとんどない。
いつもは、寸止めの有料記事ばかりの千葉日報は北総線の値下げ記事に関しては大盤振る舞いで無料公開している。記事の掲載料でももらっているのだろうか。あるいは、大切な広告主に対する忖度なのだろうか。通学定期が64.7%下がるのだから、値下げ当日に長蛇の列ができない方がおかしい。そして、珍しいことに利用者の声を拾っている。しかし、プレミアム商品券に並ぶ人たちと心理は変わらないだろうから長蛇の列もプラスの声も今だけだろう。
同じように有料記事が多い読売新聞も他社に比べて長文の記事を全面公開している。記事には「住民団体『北総線の値下げを実現する会』は1999年の結成以来、運賃の値下げを求めてきた。間嶋博事務局長は『長年、声を上げ続けてきたことが実った。通学定期の大幅値下げは高く評価する』と受け止める。ただ、『普通運賃はまだ高い。さらなる値下げを実現するため、今後は親会社の京成電鉄への働きかけも強化したい』と話している。」という今回の値下げが自分たちの成果だという北実会の残念なメッセージに共感できない。
普通運賃はまだ高いどころか、域内の移動の障害になっているという点では何の問題の解決にもなっていない。市民の移動にはマイカーが不可欠という現実は変わっていない。通学定期の値下げが可愛い孫へのプレゼントになったと考える程度の見識なら値下げ運動なんかきっぱりやめるべきだろう。
京成は、スカイライナーの線路使用料を負担しないという方針を変えることはないだろう。そのためのアクセス特急の運行があり、少しだけ身を切って北総線の高額運賃問題に対する世間の目を反らすつもりだろうか。コロナ禍で輸送人員と運輸収入が25%減っても赤字にならず、おそらく運輸収入が半減でもしなければ赤字になることのない鉄道会社を行政、政治家、メディアが挙って支援する大企業依存振りに普通の市民は呆れるしかない。
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毎日新聞の記事の中に「北総鉄道の西白井駅から徒歩3分の新築マンション『メイツ西白井』を販売する名鉄都市開発(名古屋市)の担当者はこう話す。2年前から販売を開始し、間もなく270室が完売する見通しとなっている。『ためらっていた人にとって、値下げは入居を決める判断材料の一つになったのではないか』と推し量る。」という情報がある。
しかし、メイツ西白井の公式ホームページには、今現在も「250戸供給御礼」と記載されている。つい最近まで220戸と記載されていたから販売は少し進んでいるのだろうが、なぜ供給御礼という表現を使っているのだろうか。毎日の記者はなぜその点を尋ねなかったのだろうか。読者は、そうした疑問に一番、関心があるはずだ。弱者に対しては、情け容赦ない質問を浴びせる大手メディアのご都合主義を感じる。
白井の人口の推移を調べてみた。2009年3月末と比較すると2022年9月末の人口は2,839人増え、世帯数も4,656世帯増えている。しかし、私も知らなかったのだが、2018年3月から今年の3月まで4年連続で人口が減少し、累計で1,027人減少していた。3月末と比べて9月末の人口は122人プラスの62,867人になっているが、前年9月末の62,828人にくらべると39人しか増えていない。マンションの販売により来年3月末の人口がプラスで着地しているか微妙だ。
白井の10月1日発行の広報に掲載された市長のメッセージが何の意味もないことを市民の多くは冷静に受け止めていることだろう。「この運賃値下げを大きなチャンスと捉え、子育て世代を含むあらゆる世代が『白井に住んで良かった』『白井に住み続けたい』と実感できるよう、人口減少社会を見据え中長期的な観点から、積極的に市民や市民団体、民間事業者と連携・協働による施策を進めています。」とメッセージには記されている。
実は、私自身、広報の市長メッセージを読んだのはこのブログを書くために調べ始めてからだから、おそらく、大半の市民は市長のメッセージを読んでいない可能性がある。記事は公報1面の下段に掲載されており、上段はゴミの分別ルールを促す記事で間に新型コロナワクチンのお知らせ記事が挟まれている。市民がもっとも関心を抱いている重要施策の北総線の値下げ記事が一番下なのはどうしてなのだろうか。見出しの活字のポイントもゴミの分別の記事の方が大きい。市の本気度がまったく感じられない。
白井の広報は、以前は月1回の発行だったが、いつの間にか月2回になり、それとともに内容が希薄化した感がある。回数を増やしても市民が知りたい情報が載っていなければ、今はやりのやっている感のための仕事にすぎなくなる。2週間に1回、広報を作成する手間だけが増えて中身がおざなりになっているのでは何の意味もないどころか、税金の無駄が増えただけだ。ここ数年の市の政策は税金の無駄遣いばかりが目立つような悪手ばかりだ。私は、広報が届いたら1分くらいで斜めに目を通してそのまま物置のリサイクル用ボックスに入れている。読む価値がないからだ。
最近は、議会の活動状況を監視して市民に知らせるボランティアの人もめっきり減ってしまったように思う。あるいは、ネットで情報発信をしている方が入りのかもしれないが、わざわざ情報にアクセスする人は少ないように思う。
駅周辺の活性化への取り組みがコロナ禍のコミュニティバスの1.5倍の増便、副駅名看板の設置、ホームのベンチの交換と待合室の新設で、人口減少社会への対策がラッピングトレインだとしたら、寝たまま夢を見ているうちに現実に目覚めたときは手遅れということになるだろう。
他の鉄道事業者は着々と自前でホームドアの設置を進めている。予定しているわずかな値上げをホームドアの設置の増強に充てることを表明している事業者もある。いずれ、沿線自治体は北総鉄道からホームドアの設置工事の補助金の拠出を求められることになることだろう。今後、運賃の値下げの見返りとして際限のない支援を沿線自治体は求め続けらることになるのだろうか。
成田空港線の複線化が検討されているというニュースが最近、流れていた。沿線活性化を建前にして将来的に沿線自治体は工事費の負担を求められる可能性がある。利用者が沿線の駅に途中下車することのないスカイライナーが増便になっても通過待ちが増えるだけだろうから茶番はどこまでも続くことになる。
👉“成田空港周辺の路線複線化など輸送力向上を”有識者会議(2022/8/22 NHK)~滑走路の新設計画が進められている成田空港について、鉄道アクセスを検討してきた有識者の会議は、今後の利用者の増加を見込んで空港周辺の路線を複線化するなどして輸送力を高めるべきだとする提言をまとめました。…そのうえで、都心と成田空港を結ぶJRや京成電鉄の路線について、車両や運行本数を増やすのに加え、現在単線となっていて輸送力向上に限界がある空港周辺の区間を複線化すべきだなどとしています。提言を受けて成田空港会社は「鉄道会社や国とも協議しながら検討を進めたい」としています。
ちなみに成田空港会社は国100%出資の法人だ。だから、決定の主体は国にあり、”協議”ではなく、国土交通省が決めるということになるだろう。有識者会議や審議会はいつも役所が予め決めたシナリオに沿って提言もしくは答申する場にすぎない。有識者の過半数は、役所の意向に従う人間が選ばれるので議論の過程は意味がない。少数意見はガス抜きにすぎない。今回のニュースも役所が意図的に流したガス抜き情報なのだろう。彼らの言う”適正に”という意味は形式的な手続きだけのことを指している。内容が適正かどうかは関係ない。
☆元衆議院議員の立憲民主党 みやかわ伸氏のチラシ~10月1日から より暮らしやすい街へ
「例えば、小室駅から印旛日本医大駅間の線路使用料の問題は、私も説明を聞いて、それはおかしいと思いました。こういったことを私も直接、国交省や千葉県に説明してきました。」とみやかわ氏は書いているが、成田空港線の認可申請を適切だとして認可したのは旧民主党政権だったことを忘れているのだろうか。当時の民主党 若井康彦氏は、質問主意書まで提出して北総線問題に熱心に取り組んでいる姿勢をアピールしていたが、政権交代後は豹変している。背景には、連合の労組の影響が指摘する声があった。沿線住民のことより高邁な航空政策を優先した上から目線の政治判断だったのだろう。
みやかわ氏のチラシの八方美人的な発言を読むと今も変わっていないように感じる。結局、うまく立ち回って次の選挙でということなのだろう。自公も維新も信用できないが、立憲民主党も含めて政治に沿線住民の交通問題を解決する力はないだろう。もう、政治的解決を待っている時間は住民にはない。
問題の本質は、京成の経営が北総鉄道の高収益性に依存していることにある。彼らは北総鉄道の財務体質の脆弱性など気にしていないし、困ってもいない。北総鉄道の資本不足は明らかでいくらでも改善する方法があるにもかかわらず、資本増強を頑なに拒んできた。経営基盤の脆弱性を演出することで高収益が不可欠という理屈を失いたくないからだろう。平成11(1999)年度以来、一度も増資せずに債務超過を解消し、もうすぐ累積赤字も解消される。その経営手腕?には驚かされる。増資より高額運賃の維持が経営改善に不可欠という信念には脱帽するしかない。かつて、公共交通機関としての自覚について聞いてみたら、リスクを取って経営していると答えた幹部がいた。
今や北総鉄道は、京成の利益の源泉になっている。利用者が増えなくても高収益を上げられる鉄道などどこを探しても他に見当たらないだろう。日本一高いと揶揄されても痛くもかゆくもないのだろう。北総鉄道の高額運賃は京成の生き残りのために必要な戦略であり、社員の中にはリスクをとってビジネスをしているという認識の人間もいる。そして、スカイライナーは配当を維持するための京成の成長に不可欠の事業になっている。
私は、以前、もし千葉ニュータウン鉄道という架空会社を使って京成が公団線を買収するのではなく、北総鉄道が買収していたらというシミュレーションをしたことがある。結果は、それがベストだった。なぜなら、多額の利益を計上して多額の資金が税金として社外流失してしまうのを防げるからだ。買収した鉄道資産の減価償却費が増えることで内部留保が増え、債務の返済原資を増やすことができるからだ。まともな企業は、内部留保を増やす方法を選ぶはずだ。
公団線の買収により北総鉄道の減価償却費は増えるものの線路使用料の負担がなくなるので収益も短期間で改善するというのが私のシミュレーションの結果だった。しかし、それは京成には相容れない選択だったと考えられる。北総鉄道の経営改善は京成の利益を減らす方向に働くからだ。
千葉ニュータウン鉄道の赤字は、資本金僅か1,000万円で残りの公団線の買収資金を京成からの貸付という形をとっているために生じているものだ。千葉ニュータウン鉄道は、京成の100%ペーパーカンパニーだから連結ベースでは損益が相殺され、千葉ニュータウン鉄道の赤字は既に存在していないと考えられる。
京成が千葉ニュータウン鉄道に貸付けている資金の多くは、京成が北総鉄道に貸付けている資金を消費寄託金として回収した資金と推測される。資金不足のはずの北総鉄道には、公団線買収当時、余剰資金が消費寄託金(その他の流動資産の中に含まる)として130億円も計上されていた。公団線の買収額が150億円(193億円ー県の補助金43億円)だったことを考えれば北総鉄道が買収することは十分可能だったことがわかる。
京成の北総鉄道への貸付金が千葉ニュータウン鉄道への貸付に振替られて公団線の買収が実行されたというのが実態だ。北総鉄道には、いまだに消費寄託金という名前の多額の余剰資金が計上されている。もし、北総鉄道が余剰資金の原資となっている京成の貸付を返済すれば、北総鉄道の債務が減少して値下げできない理由の長期資金収支不足が改善することになるだろう。
そもそも、千葉ニュータウン鉄道は、実質的に京成そのものなので第三種鉄道事業者ではなく、京成が鉄道資産を保有して運行する第一種鉄道事業者として認可されるべきものだ。鉄道事業法第26条第7項には「鉄道事業の譲渡を受けた者又は合併法人等が同一の路線について第二種鉄道事業の許可及び第三種鉄道事業の許可を取得することとなったときは、当該路線に係るこれらの許可は失効し、当該路線について第一種鉄道事業の許可を受けたものとみなす。」と明記されている。ペーパーカンパニーを除くとはどこにも書かれていない。
だから、現在の北総鉄道と千葉ニュータウン鉄道の線路使用料問題は、本来、北総鉄道と京成の間の相互乗り入れとして解決されるべきものでスカイライナーの線路使用料を別途、京成が北総鉄道に支払えば済む単純な問題にすぎない。スカイライナーの線路使用料を負担したくない京成の都合でアクセス特急との収入配分や千葉ニュータウン鉄道というややこしいスキームが作られたことは、ちょっと調べれば誰にでもわかることだ。千葉ニュータウン鉄道の線路使用料が高すぎるという論点は枝葉末節の問題にすぎない。
そして、上下分離は本来、運行主体である事業者の鉄道保有コストの負担を軽減することが目的のはずなのに北総鉄道と千葉ニュータウン鉄道の関係は逆転してしまっている。千葉ニュータウン鉄道の作られた赤字を補填するために法外な線路使用料を北総鉄道が負担する構図になっている。
文科省や政治家が旧統一教会問題に及び腰なのと国交省と政治家が北総線問題の核心に触れたがらないのは国民の利益よりも利害関係で政治が動いているためなのだろう。メディアも利害関係から広告収入に影響しそうな大企業の不都合な情報を報道しようとしない。国もメディアも決して、正義の味方ではない。
みやかわ氏は運賃問題については、まずは通学定期に重点を置くべきだと熊谷県知事に説明したことを強調しているが、最初の第一歩でなく、最後の値下げになる可能性が高いと私は考えている。それどころか将来の値上げもあり得る。
上限運賃制は、一度認可されれば、値下げ後も届け出だけでいつでも簡単に上限運賃まで値上げできることを忘れてはならない。実際に北総鉄道は過去に値下げ補助金打ち切りで値下げ後の再値上げを躊躇なく断行している。県や自治体の補助金の支援を彼らは当然の権利と思っている。感謝の気持ちなど彼らが持ち合わせていないことを過去に我々に示している。
運賃は事業者の専決事項だ。それ程、われわれ利用者の立場は弱い。だからこそ、これまで北総鉄道が利用者無視の利益優先に邁進できたと言える。上限運賃制が能率的な経営を促すどころか、非能率的な経営を維持したまま高額運賃を既得権化する制度になっている。それならそれなりの対応を市民はとるべきだろうと思う。
見せかけの共存共栄に騙されてはいけない。国が最初にやらなければならないのは自由化という名の下に事業者優先を支えている鉄道事業法の見直しと国交省の裁量権に歯止めをかけることだろう。鉄道事業における天下りと渡りは全面的に廃止されるべきだ。自分たちの実績と行動をアピールするために天下りの社長を礼賛する見識のない人たちには呆れてしまう。
議員や沿線自治体にできることは事業者にお願いすることだけだ。市民団体は、事業者に提供できる見返りがないから無力だ。もし、あるとすれば適切に問題点を分析して理解者を増やすことくらいだろう。
値下げ運動を主導してきた北実会のメンバーは政治がらみの人が多く、鉄道事業に限らず、財務知識や法律知識も乏しいのが現実だ。今だから言えるが、かつて債務超過と累積赤字の違いを理解していないときもあった。せっかく集めた情報をきちんと分析することもなく、北総線の運賃が他社線にくらべて高すぎるということが彼らの主張の中心だった。そのため、値下げ裁判中も彼らは公団線の買収時に千葉ニュータウン鉄道に拠出した県の補助金の額すら把握していなかった。
もし、運賃が高すぎるという事実以外に値下げすべきだという根拠がないなら、北総鉄道の運賃を下げるべきだとは私は考えなかっただろう。だから、同じように高額な運賃の東葉高速鉄道の運賃を値下げするべきだと考えたことは私は一度もない。北実会が頼りにして値下げ裁判の訴訟を請け負った著名な弁護士のまとめた上告の訴状に書かれた主張を読めばそれがどれほど世間の常識と乖離した無理筋な内容だったかわかるだろう。私は上告を止めるよう提案したが、猫が道路を渡り始めたら止まれないように突き進み、裁判は予想通りの結果に終わった。
議員にできることは、鉄道事業法の改正をして上限運賃制が既得権にならないように制度変更することや国土交通省の裁量権を縮小することだろう。彼らが事業者の社長に会っても挨拶程度の意味しかない。せいぜい、事業者の要望を聞いて支持を取り付けることくらいだろうか。それは、結局、沿線住民のためではなく、自分たちが選挙で有利に戦うための行動にすぎない。
北総線問題の解決に政治家個人は無力だ。北総線問題の解決で彼らに投票するのは何の意味もない。何の権限も力もない人間に何を期待するのだろうか。そもそも、北総線問題を根本的に解決する意思すらないように見える。
チラシの中でみやかわ氏は前森田知事を「大変後ろ向き」だったと批判しているが、京成の支援を受けていた森田氏が北総線問題に動くことはそもそも期待できなかったし、彼にはパフォーマンス以外に何もなかった。一方で立憲民主党は鉄道労組の支援を受けているので彼らも北総線問題には無力だ。結局、今の政治家は選挙に影響するような利害関係のある問題を解決することはできない。
事業者は値下げについて何も拘束されていない。再値上げをするにも正当な理由すらいらない。過去の値下げ補助金の打ち切りが正当な理由だというなら、利用者側には対抗するための術はない。鉄道を利用しない市民には迷惑だろうが、せいぜい、税金を注ぎ込んで値下げしてもらうしかない。
みやかわ氏のチラシには「普通運賃も、例えば、西白井~京成高砂間は100円安くなりました。」と書かれているが、西白井の住民で京成高砂を目的地にして出かける人間などほとんどいない。値下げを強調するためのレトリックなのだろう。
北総線の値下げに合わせるように廃止されたコミュニティバスの西白井→新鎌ヶ谷駅直通ルートの乗降客が最も多かったのが西白井駅だったことからも市民が最も望んでいたのは、西白井⇔新鎌ヶ谷間の運賃の値下げだったはずだ。
このたった3.1km1駅の運賃は30円値下げされて309円から279円になっただけで現行の東急東横線なら渋谷から横浜まで行ける運賃だ。来年3月の値上げ後でも渋谷から横浜までの運賃は309円にすぎない。千葉ニュータウンの入口の西白井駅までの運賃がかさ上げされたままなので千葉ニュータウン内を移動するための負担は以前と何も変わっていないのが現実だ。
マスコミや議員は、初乗り運賃が190円(IC運賃188円)に下がったことを強調しているが、初乗り運賃では千葉ニュータウンのどこへも辿り着けない。北総鉄道はもともと千葉ニュータウンの住民のために開業した鉄道で人口が計画より増えなかったから高額運賃になっているという説明がこれまでなされてきたが、実際は受益者負担という発想のもとに掛かったすべての経費を回収する鉄道運輸機構のしくみにより生じた高額運賃だ。
ニュータウンの住民の足のためだけに建設されたのならこれほど高規格の鉄道は必要がなかったはずだ。国はもともと将来の成田空港へのアクセス線として整備してきたはずなのに成田空港線の開業前も開業後もすべてのコストを沿線住民に押し付けてきた。そして、線路使用料を払っていないスカイライナーや北総鉄道の運賃を横取りしているアクセス特急の走行があたかも北総鉄道の経営改善につながっているかのような嘘を底の浅いマスコミは検証もせずに流している。
ニュータウンの住民の足がいつの間にか空の足に変質しつつある。現実に土休日の北総線の線路を走るスカイライナーとアクセス特急の本数は、既に北総線の列車本数を上回っている。庇を貸して母屋が乗っ取られつつある。将来は、北総線という古めかしい名称が無くなり、スカイアクセス線に吸収される日があるのかもしれない。そのときには、スカイアクセス線の歴史に上書きされ、北総線の黒歴史は思い出されることもなくなるだろう。鉄道オタクでない私は、これまでの経緯を忘れたような北総鉄道50周年キャンペーンを素直に祝福できない違和感を持っている。誰かの国葬と同じで後になればよかったということにはならない。ラクビーのノーサードは、フェアな戦いの後の対応だと思う。アンフェアな戦いにノーサードはあり得ないと思う。