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北総線の値下げと並行バス

 今回の北総線の値下げで並行バスの意味が失われたように思われる。これはあくまでも私の推測にすぎないが、すべてがコロナ禍の事業者の救済を優先し、市民の交通利便性を犠牲にした行政の交通政策の結果のように見える。

 

 昨年11月の北総鉄道の唐突な値下げ発表前の8月にコミュニティバス(通称、ナッシー号)の新鎌ヶ谷駅直通便が廃止されている。これは、前回の白井駅からの新鎌ヶ谷駅直通便の廃止に続くものだ。

 

 👉2021年8月2日からのナッシー号のルート改正の不都合な事実(1)

 

 コロナ禍で公共交通機関全般の利用が減少している時期に新鎌ヶ谷駅直通便を廃止して生まれた余裕でコミュニティバス全体の便数を1.5倍に増便して交通利便性を高めるという市の主張は論理破綻している。最近の市の施策は理解に苦しむ悪手ばかりだ。

 

 増便には“極端に”運行経費を増やさないという運行経費増額ありきの前提までついていた。コロナ禍で利用者の増加が期待できないのに交通空白地域の便数を増やし、収支の悪化は厭わないという説明には開いた口が塞がらない。

 

 都心へ向かうバスではなく、逆方向の郊外の千葉ニュータウン中央駅に向かうバスを大幅に増便してどれだけの需要があるのだろうか。千葉ニュータウン地区は、464号線沿線に商業施設が集中しており、むやみに広いだけの駅前広場に降ろされてもショッピングゾーンへの移動の足がない。便数が増えたといっても運行本数は高知れで市民は買い物の荷物を持ってバス停とショッピングゾーンをうろうろしてバス停でじっとバスが来るのを待つのだろうか。そもそも、白井市民が仕事以外でマイカーでなく、公共交通機関を利用して千葉ニュータウン地区に行くこと自体が想像できない。

 

 白井市は4年連続で人口が減少しており、これから税収が減少して行く可能性があるときに効果の期待できない施策に税金を投入する愚策としか思えない。コミュニティバスはいずれ縮小せざるを得なくなるだろう。事業者の救済を優先して市民の生活の質を低下させるようなマネは止めてほしい。いっそのこと利用者が減るばかりのコミュニティバスを廃止して交通空白地域のみ運行するオンデマンドタクシーに切り替えてはどうだろうか。

 

 コミュニティバスの西白井駅⇔新鎌ヶ谷駅のルートは市民にとって需要の高いルートで乗降客が最も多いのが西白井駅だった。このルートが無くなることで収支が悪化することを市も認めながら愚かなルート改定が断行されている。この件について議会で議論したのかすら不明だ。

 

 コミュニティバスのルート改定のための交通協議会の議事録にコミュニティバスの事業者でもあるちばレインボーバスの委員は、コミュニティバスのルートが乗合バスのルートと競合し、運賃が安すぎるという趣旨の発言をしていたことが記録されている。

 

 さらに白井市の実情を知らない学識経験者の委員は、交通協議会の場の議論を路線バスへの補助金の支出にまで拡大するべきだという趣旨の発言をしている。

 

 しかし、コミュニティバスの運行で事業者はリスクを負っていないどころか利益を得ており、今回のコミュニティバスの増便の目的が自立運営が前提の路線バス事業者の支援のためだと考えられるのでこの発言は許容できないものだ。白井のコミュニティバスの運賃は印西と鎌ヶ谷の運賃が100円なのに比べて150円だから決して安すぎるということはない。

 

 しかも、印西と鎌ヶ谷のコミュニティバスの運行を受託しているのもちばレインボーバスなのだから虫が良すぎる。コミュニティバスの運賃が不満なら運行事業者から降りたらどうだろうか。事業者がリスクを負わない事業だから新しい事業者はすぐに見つかることだろう。

 

 今回の増便でちばレインボーバスに対する運行委託費がいくらになったのか、未だに市民には知らされていない。1年経った後の利用状況も皆目わからない。議員は誰もこの件について市民に情報を提供していない。見ざる聞かざる言わざるの議員に投票するのは止めるべきだ。私は、次回の選挙では実態を調べて情報を公開した議員に投票したいと考えている。

 

 北総線と並行バスの運賃比較表を作成してみて事業者間でバーター取引があったのではないかという疑念を私は抱いている。無論、これは私の憶測にすぎないが、もし、次の憶測に反論がある議員がいるのなら、是非、情報を公開して私の憶測が間違いであることを証明してほしい。きちんと調べた上で選挙も近いので市民向けのビラで説明してほしい。

 

 今回の北総線の値下げは、邪魔な並行バス潰しの狙いもあったのではないだろうか。手始めに北総線と競合するコミュニティバスの新鎌ヶ谷駅直通便が北総線の値下げ発表前に廃止されたのは市の忖度なのか、事業者の意向なのか、市と事業者の話し合いの結果なのか。おそらく、市はきちんとした説明ができないことだろう。

 

 北総線の割引回数券の利用を厭わない人は、今回の値下げで北総線の代替交通機関として並行バスを利用する意味が薄れたように思う。

 

 千葉ニュータウン中央駅と白井駅から新鎌ヶ谷駅に割引回数券を使って移動するときに利用時間帯や曜日の制限に不満を抱かない人には今回の北総線の値下げで並行バスの運賃のメリットがなくなり、所要時間、運行本数、速達性、快適性のいずれの点でも劣る並行バスを利用する理由がなくなったように思う。

 

 西白井駅は運賃だけ見れば、ちばにうのバスを利用するメリットがあるかもしれないが、ちばにうのバスは今後、便数が増える可能性がなく、マイカーから1時間に1本しかない交通機関に移行しようという市民は少ないように思う。新鎌ヶ谷駅行きのコミュニティバスが廃止される前は運賃が同一なので時間に合わせて乗るバスを選択することができた。利用者の立場から見れば、新鎌ヶ谷駅行きのバスが実質的に減便になっている。しかも、西白井駅以外のバス停で新鎌ヶ谷駅行きのバスに乗っていた高齢者は西白井駅まで行かなければバスを利用できなくなってしまっている。

 

 ちばにうの増便が期待できないのは、ちばにうのバス停がコミュニティバスのバス停を共用して間借りしている状態だからだ。残りの2つのバス停は京成が占有しており、自社のバスの利用者が減少しても京成がちばにうにバス停を明け渡す可能性は考えられない。

 

 北総線の割引回数券は15枚つづりで普通運賃の10倍の価格なので実質33.3%割引だ。不思議なことに千葉ニュータウン中央駅、白井駅からの新鎌ヶ谷駅までの割引回数券の金額を15で除するときれいに割り切れる価格になっている。偶然だろうか。おそらく、並行バスの運賃に合わせて回数券1枚当たりの金額を先に決めておいて北総線の値下げ後の運賃を決めたのではないだろうか。

 

 この2つの区間の割引回数券を利用したときの運賃は、並行バスを運行しているちばにうのバスの運賃と変わらない。千葉ニュータウン中央駅から新鎌ヶ谷駅までのちばにうの直行便はニーズがないことは証明されており、時間帯によっては回送のこともある。そのため、直行便は北総鉄道の割引回数券の利用できる平日の時間帯はほとんど運行されておらず、主に割引回数券が利用できない平日の通勤時間に運行されており、土休日も運行されていない。

 

 西白井駅⇔新鎌ヶ谷駅間については、コミュニティバスの直通便がなくなり、ちばにうのバスはコミュニティバスのバス停を共用してコミュニティバスの運行の隙間に運行しているような状態だからこれ以上便数が増えることもないだろうから京成は他社の駅前のテリトリー侵害を容認しているのだろう。

 

 ちばレインボーバスの北総循環線が西白井駅に参入しないのはおそらく、西白井駅の利用者を極力、北総鉄道に誘導したいと京成が考えているからなのだろう。

  

 こうやって分析してみると千葉ニュータウン中央駅、白井駅、西白井駅について事業者間で住み分けができているように見える。

 

 市は市民の交通利便性の改善よりもコロナ禍での事業者の救済に動いているように映る。議員は見ざる聞かざる言わざるを決め込んでいる。そして、それは結局、事業者や市民のためではなく、選挙のための保身なのだろう。

 

 小泉元首相から政治家には選挙しかないと言われたという経営者の記事をこの間読んだ。最近の政治を見ているとつくづくそう思う。残念ながら国民のためとか市民のためというのは建前にすぎない面の皮の厚い人間が政治家には多い。