(2023/05/13 更新)
北総線の昨年10月の運賃値下げから6か月が過ぎた。改めてその目的と成果?を検証してみた。北総線の車内には、今でも運賃値下げをアピールする中刷り広告が下がっている。
最初に上段の「通学定期運賃を大幅(約⅓)値下げ」という文字が目に飛び込んでくる。
しかし、冷静に考えてみれば他の路線並みの水準になっただけの話で他の地域より安くなったわけではないから差別化にならない。北総線沿線に住んでいる通学生を持つ親の負担が減っただけだ。そのこと自体は喜ばしいことだが、通学定期代が安くなったから白井に住み替えようと考える人はいないだろう。
しかも、恩恵は市民のごく一部に限られる。少子高齢化で白井も5年前から毎年、人口が減り続けている。当然、通学生も減少していることだろうから経済効果は限定的だ。
値下げ告知広告には、初乗り運賃210円⇒190円の文字が躍っているが、千葉ニューターンの入口である西白井駅までは初乗り運賃では辿り着けない。つまり、初乗り運賃では千葉ニュウータウン内のどの駅にも行くことができない。
西白井駅⇔白井駅間は3㎞以内なので初乗り運賃が適用されるが、新鎌ヶ谷駅⇔西白井駅間は3.1㎞なのでわずかに距離オーバーとなるため初乗り運賃は適用されない。驚いたことに新鎌ヶ谷駅⇔西白井駅の間の距離があと0.1㎞(実際の距離は、1mかもしれないし、80mかもしれない。正確な距離は事業者にしかわからない。しかも、距離を測る基準があいまいだ。)短ければ、新鎌ヶ谷駅から千葉ニュータウン中央駅までの運賃がすべてワンランク下の運賃が適用されていたはずだ。
この区間の利用者はなんて運?が悪いのだろうか。区間運賃の値下げより新鎌ヶ谷駅⇔西白井駅の間の距離の距離を変更してほしかった。「営業キロの設定は鉄道事業者の裁量の範囲内」という最高裁の判例があるので実現可能だ。
👉北総線の本当の初乗り運賃~東急電鉄の値上げと西白井駅の運賃
👉値下げをしなくても北総線の千葉ニュータウンの運賃は下げられる?
通勤定期の値下げが新鎌ヶ谷駅⇔京成高砂駅を例にして説明されている。しかし、北総線は元々、千葉ニュータウンと都心を結ぶ通勤路線として開発された鉄道であることを考えると作為的なものを感じる。最も値下げ幅の大きい区間を選択したように思える。千葉ニュータウン中央駅⇔京成高砂駅を例にして値下げ内容を説明することにより値下げ後も北総線の運賃が相変わらず高額であるという事実を世間に認知されたくなかったのだろう。
新鎌ヶ谷駅⇔京成高砂駅の6か月定期は、108,870円(▲25,490円)だが、千葉ニュータウン中央駅⇔京成高砂駅の6か月定期は、163,300円(▲15,820円)だ。普通運賃を「中距離帯を中心に最大100円の値下げ」をしたので近距離と長距離は高いままというのが現実だ。
新鎌ヶ谷駅から1駅の西白井駅まで(3.1km)の片道運賃は310円→280円(▲30円)、終点の印旛日本医大から京成高砂までの片道運賃は840円→820円(▲20円)と高額運賃は解消されていない。印旛日本医大から日本橋までの片道運賃も1,210円→1,190円(▲20円)と値下げに値しない運賃だ。6か月通勤定期は263,260円もかかり、押上から先は距離に関係なく6,910円しか下がっていない。
「北総線の運賃値下げに合わせ、沿線地域の更なる活性化に資することを目的として」北総線沿線地域協議会によって2022年8月31日から2023年2月までの半年間、運行されたラッピング電車「北総沿線活性化トレイン」の車両に「千葉ニュータウン中央駅から日本橋駅まで最速41分」という広告が書かれていた。それなのに値下げでこの区間の運賃が1,150円→1,090円(▲60円)に下がり、より利用しやすくなった?ことをなぜアピールしなかったのだろうか。
白井市長にとっても「運賃値下げは追い風」だったはずだ。こういうのを都合のいい情報の切り取りと言うのではないのだろうか。白井市も車体に広告を出したが、5年連続の人口減少という結果に終わっている。元々、広告の効果は期待されていなかったのではないだろうか。この事業で運賃値下げ補助金の代わりとして事業者側に広告料を払うのが目的だったのではないかと考えられる。
コロナ禍で公共交通機関の利用が減っている時期のコミュニティバスの1.5倍の増便(運行経費の増額)も運賃値下げとリンクしているのだろうか。ルート改正の決定前に必要な予算を計上をしていたことが地域公共交通活性化協議会の議事録に残っており、協議会に市が示した見直しの考え方は「現行の運行経費水準を極端に増大することなく、運行本数を増便する」というとんでもないもので、運行経費の増額ありきだったことがわかる。不思議なことにこの件について議会でどのような議論が行われたのかを市民に伝える議員は現在まで一人もいない。行政と議会の常識を疑わざるを得ない。
新鎌ヶ谷駅から西白井駅までの運賃を下げると北総線全体の運賃に影響するし、長距離運賃をいじると京成の稼ぎ頭のスカイライナーの運賃収入や北総線への線路使用料の支払い原資となっているアクセス特急の運賃収入に影響が出る。
京成は運賃収入への影響が最も少なくてアピール効果が高い通学定期の値下げで最小限の値下げを行ったというのが真相だろう。しかし、通学定期を20年前に値下げしていたとしても収益にはあまり影響しなかったことだろう。
通学定期は京成(北総鉄道の実態は京成)の沿線自治体に対する最大の交渉材料だった。北総線沿線の千葉ニュータウン内の自治体は、かつて通学定期代の補助を直接、通学生に対して行っていた。その後の北総鉄道に値下げ補助金を払っていた時期は値下げ補助金の継続が通学定期値下げの継続の条件になっていた。値下げ補助金停止後は10年間限定の通学定期の値下げが継続されていたが、その間も耐震補強工事の助成を名目にして実質的に補助金が払われていた。今回の値下げが期限の迫っていた10年限定値下げの通学定期を人質にして京成側に有利に進められたことは想像に難くない。
👉耐震化で補助金要請 北総鉄道、千葉県と沿線市に~同線の運賃は、県と沿線6市が支出する補助金が打ち切られる来年4月から値上げされるが、通学定期については耐震化補助と、県企業庁が北総鉄道に貸し付けている融資53億円の返済開始期限を5年間先送りすることを条件に10年間据え置かれることが決まっている。
選挙が近い議員は、通学定期の値下げが選挙に有利になると考えたことだろう。そして、通学定期の値下げを中心にした値下げに反対すればそれはそれで有権者からの反発を買う可能性があるだろうと選挙がすべての彼らが考えたとしても不思議ではない。だから、誰もさらなる値下げとは言わなくなり、それどころか一部の議員は北総鉄道の社長の英断として市民にアピールしていた。
しかし、北総線の値下げ後は選挙対策のビラで北総線問題に触れる議員はほとんどいなかった。私は、今回の北総線の値下げについて評価する一般市民の声を聞いたことがない。値下げ直前に定期券の買い換えで駅の窓口に行列する通学生から評価する声を拾った忖度マスコミの報道くらいしか思いつかない。誰だって、定期代が三分の一になれば行列するし、評価もするだろう。普通運賃が半額になれば、私も北総鉄道の英断として評価したかもしれない。だが、20年かかって30円の値下げを評価する市民は誰もいないだろう。国土交通省を盾にして自分たちの利益追求しか頭にない鉄道事業者に誰が共感できるだろうか。
4月9日の県議会選で北総線の値下げに言及していたのは自民党の支援する落選した議員くらいだった。北総線の値下げを実現しましたという宣伝カーのアナウンスにあきれていた。前回の参院選でしきりに北総線の通学定期の値下げに言及していた立憲民主党は、県議選ではまったく北総線問題に触れなかった。ひょっとするとそれが幸いして当選したのかもしれない。
正直、私は前回の県議選では自民党の候補が無投票で当選していたのでどうせ組織票を持つ自民党の候補が有利だろうと考えていた。私は自公や保守を名乗る人間に投票したくなかったので立憲民主党の候補に投票したが、政策に期待して投票したわけではない。
どうして自民党の候補が落選したのか疑問に思い、選挙結果を分析してみた。そこでわかったことは自民党の支持基盤の旧市街区の投票所(第一・二・三小学校)の投票率が大きく下がっていることだった。とりわけ、白井第三小学校区の落ち込みが著しい。旧市街区(第一・二小学校地区)に配慮したコミュニティバスのルート改正は住民には響かなかったようだ。普段、車中心の生活を送っている地域の住民には不便なバスに魅力を感じなかったのかもしれない。
白井第三小学校のある富士地区の投票率は最下位の17.57%だ。人口が増え、有権者数は7,910人と最大だが、投票人数はわずか1,390人だ。全体の投票率の半分以下の数字だ。
この地区は、最寄りの西白井駅から離れており、コミュニティバスは西白井駅や新鎌ヶ谷駅に出るための足として多くの住民が利用していた。そのため、市に対して新鎌ヶ谷駅までの直通便の増便を求める要望書がこの地区から出されていたが、2021年8月のコミュニティバスのルート改正で増便どころか新鎌ヶ谷駅までの直通便自体が廃止されてしまっている。
この地区の人たちは、公共交通機関を使って新鎌ヶ谷駅に行くためにはコミュニティバスに乗って西白井駅まで行き、1時間に1本程度しかないちばにうのバスか、北総線に乗り換える必要がある。西白井駅までの道路は歩道が十分整備されていないため徒歩や自転車で行くのは高齢者には厳しい。乗り換えによる待ち時間だけでなく、乗換えで増える運賃負担も大きい。
選挙区の中で人口が増え、投票率も変わっていない地区がある。それは桜台地区だ。この地区は北総線の値下げとコミュニティバスのルート改正で最も恩恵を受けた地区だ。桜台の最寄り駅は新鎌ヶ谷駅までの北総線の運賃が最も下がった千葉ニュータウン中央駅だ。そして、増便された千葉ニュータウン中央駅行きのコミュニティバスは桜台センターに停車する。
ちなみに新鎌ヶ谷駅の直通ルートの廃止で市が挙げた理由は、最寄りのバス停と新鎌ヶ谷駅までの距離と所要時間だ。一方、千葉ニュータウン中央駅のルートを残した理由は最寄りの桜台のバス停からの距離と所要時間が短いというものだった。しかし、新たに北ルートに設定した千葉ニュータウン中央駅直通ルートは、従来の北ルートからの千葉ニュータウン中央駅までの延伸距離の方が、新鎌ヶ谷駅と最寄りバス停の距離より長いという矛盾がある。延伸途中の桜台のバス停から千葉ニュータウン中央駅までの距離を比較して所要時間が短いというのは詭弁だろう。廃止された新鎌ヶ谷駅直通ルートは市役所から新鎌ヶ谷駅まで45分だったが、新設の北ルートは市役所から千葉ニュータウン中央駅までの所要時間が1時間以上かかる。全体の交通利便性が上がるという市のルート改正による利点の説明は意味不明だ。
駅と市内の最寄りバス停からの距離で効率性を判断することはできない。最も優先されるべきは市民にとっての交通利便性のはずだ。桜台には京成グループのちばレインボーバスが北総循環線を運行しているので従来の京成の主張に沿えば、コミュニティバスと路線バスが競合していることになる。これは市の「民間にできることは民間で」という主張とも矛盾している。
桜台地区は富士地区の住民のように不満を持つ住民が少なかったことが投票率に影響した可能性がある。期日前投票が大きく増えているので実際の投票率はプラスだった可能性もある。かつて、千葉ニュータウン中央駅の駅前駐輪場使用料に対する補助をめぐって桜台の経済圏は千葉ニュータウン中央地区だから補助が認められないなら印西に編入してほしいという極論を言う人がいたことを思い出す。
もし、今でもそう思っている人がいるのなら実現可能性の低いことを主張するより、印西エリアに転居することで問題を解決することができる。Googleのデータセンターの開設等の企業進出による法人税の増収、アクセス特急の停車等の交通利便性のよさ、人口も増加しており、"脱北"により人口が減少している白井より格段に発展性がある。印西は最大100円の北総線の値下げを最も生かせる地域かもしれない。印西には伸びしろが感じられ、投資の世界なら買いだろう。
桜台の住民の大半は桜台が白井だからという理由で選んだのではなく、最寄り駅が千葉ニュータウン中央駅という条件に該当する地域の一つとして選んだ場所が桜台だったにすぎなかったのではないだろうか。中には交通利便性を理由に桜台地区に転居する白井市民もいる。別に白井に愛着を感じているわけではないように思う。私自身、白井の住環境には満足しているものの白井に決して愛着を感じているわけではない。白井の政治の状況と交通利便性は、はっきり言って最悪だと思う。
👉2021年8月2日からのナッシー号のルート改正の不都合な事実(3)~最終章
こうした交通利便性の低下につながる施策は、北総線の値下げに合わせて実施されてきている。おそらく、北総線の値下げの代償なのだろう。通学定期を世間並に下げるために京成側の要望を受け入れた結果なのだろう。通学定期を下げる代わりに市民が北総線を利用する施策としてコミュニティバスの改悪が行われたと考えるのが妥当だ。
コミュニティバスの運行も受託している京成は北総線を優先した交通網の独占を要求しているのだろう。通学定期の運賃の値下げのために一般市民の交通利便性を犠牲にすることを市長は選択したことになる。
利用者の多くが新鎌ヶ谷駅に行くためにコミュニティバスを利用していたと考えられるのでルート改正後のバスを市内で見かけても乗客は平均2人くらいだ。空のことも珍しくない。前回の白井駅からの新鎌ヶ谷駅直通便の廃止でコミュニティバスの利用者が三分の一になり、西白井駅からの新鎌ヶ谷駅直通便の廃止でコミュティバスの利用は壊滅的な状況だ。白井文化会館の事業の縮小が検討されているくらいだからいずれコミュニティバスも廃止せざるを得なくなるだろう。通常は、利用者を増やして採算を上げようと考えるはずなのに利用者が減ることを前提に増便する愚かな市にいや気がさして白井を出ていく人が増えることだろう。
結局、1.5倍に増便して赤字が膨らんだだけだろう。それなのにコミュニティバスの利用状況を市民に伝える議員はただの一人もいない。普段、税金の無駄遣いをなくすという公約を掲げている議員もこの件については口をつぐんでいる。コロナ禍に減便でなく、増便という奇策は事業者への委託費の増額が目的だった考えると最も筋が通る。コミュニティバスの運行を受託している路線バス事業者への間接的な補助金の交付が真の目的だったのではないだろうか。自立運営が原則の路線バス事業において一部の事業者に補助金で支援することが難しいためにコミュニティバスの増便というでたらめの施策が考えられたのではないだろうか。そして、この施策が北総線の値下げとリンクしているのだろう。これまでの北総線問題の経緯からすると市と事業者の間に何らかの覚書が存在する可能性も否定できない。
新鎌ヶ谷駅直通のバスを廃止しておいて下りの千葉ニュータウン中央駅行きのバスを従来の8便から23便に増やしている。あきれたことに21便の増便のうち15便が千葉ニュータウン中央行きだ。白井の市民でコミュニティバスに乗って千葉ニュータウン中央駅に行く人間はまずいない。千葉ニュータウン中央駅に行くときは北総線かマイカーを使うことだろう。利用者の多い新鎌ヶ谷駅の直通便を廃止して利用者の見込めない千葉ニュータウン中央駅行きのバスを増やす合理的な理由は見当たらない。
👉 2021年8月2日からのナッシー号のルート改正の不都合な事実(1)
千葉ニュータウン中央駅行きを増便した理由として考えられるのは、一つには北ルートの住民と白井工業団地の通勤利用者を北総線の利用に誘導する目的があったものと考えられる。また、一つには交通不便地域(注)の北ルートの自民党支持者に配慮した可能性もある。しかし、コミュニティバスのルート改正は白井工業団地側の要望と大きく乖離しているように思う。市長の主張する企業誘致の実現の最大のネックは交通利便性問題だろう。北総線の通学定期の値下げくらいしか人口減少対策として思いつかなかったのではないだろうか。このままでは人口減少の記録が今後も更新され続けていくことになるだろう。市民は、もっと市の人口の推移に関心を持つべきだと思う。
👉2019年白井工業団地の活性化等に向けた要望等について(2019年7月23日)~(1)公共交通(路線バス)の確保等 民間路線バスの運行本数が少なく、かつ市内の各駅に向かっておらず、アクセスが非常に不便となっていることから、民間路線バスの確保について、関係機関に要請していただきたい。また、民間路線バス及び市営バスの確保は、市内雇用や障がい者雇用を促進する上で最大の障害となっているため、市全体の課題として総合的に早期に対応していただきたい。なお、市営バス(ナッシー号)の運行時刻については、夕方の退勤時間帯とタイムラグがあり、ほとんど利用できない状況であることから、運行時刻の変更を早急にしていただきたい。
(注)北ルートの地域は実際には交通不便地域とは言えない。なぜなら、路線バスについては🔗白井工業団地から東武野田線の高柳駅までちばレインボーバスの鎌ヶ谷線が平日だけでなく、土休日も1時間に1本以上、通勤・通学時間帯は1時間に2本運行されており、高柳まで17分で行ける。また、🔗白井工業団地から同じ鎌ヶ谷線で白井駅まで10分で行ける。平日はほぼ1時間に1本、土休日も12本が運行されている。そして、🔗白井工業団地からは西白井線も運行されており、平日13本、土休日5本が運行されている。鎌ヶ谷線の白井駅行きと同レベルの運行本数が確保されており、新鎌ヶ谷駅までの所要時間は23分だ。だから、北ルートの住民と白井工業団地の通勤利用者にとっては運賃が高くなる千葉ニュータウン中央駅へのルートは魅力のないものだったことだろう。そして、ここでも京成や市の主張する路線バスとコミュニティバスの競合という矛盾が存在する。すべては後付けの理由なのだろう。このろくでなしとしか言いようがない。そもそも路線バスもコミュニティバスもちばレインボーバスが運行しており、事業者は同じで収入はすべて同じ懐に入る。千葉ニュータウン鉄道も京成の完全なペーパーカンパニーで同一だ。そういえば、安倍元総理の昭恵夫人も森友学園問題では公人でなく、私人だった。北総線問題では千葉ニュータウン鉄道は京成とは別法人という扱いになっている。政治家や官僚、大企業の経営者はいつも庶民には理解できない嘘を平気でつく。
北総線の「中距離帯を中心」の値下げの本当の意図は、千葉ニュータウン中央駅⇔新鎌ヶ谷駅間の並行バス潰しにあったと考えられるからだ。北総線のこの区間の値下げにより、対抗するちばにうのバスの運賃と北総線の割引回数券を利用した運賃の間に差がなくなっている。北総線の割引回数券が使えない平日の通勤・通学時間帯を除けば、運賃以外で北総鉄道に優位するものがないちばにうは今回の値下げでこの区間の競争力は完全に失われたと言える。
一方でちばにうの千葉ニュータウン中央駅⇔新鎌ヶ谷駅間の直行便については元々、利用者が少なく、いずれ廃止せざるを得ない状況にあるように思われる。直行便だけでなく各停の北環状線の千葉ニュータウン地区の利用者も減少しているようで1月16日から現在までちばにうのバスは土日・祝日ダイヤで運行されている。なお、直行便は土日・祝日は運行していないので事実上直行便の運行は停止状態にある。
運行事業者のホームページに掲載されていたお知らせがなくなっていたので平常運転に戻ったのかと思っていたが、西白井駅のバス停には色褪せた無残なお知らせが今でも残っていた。ネットの路線情報で調べても土日・祝日ダイヤの時刻表しか確認できなかった。事業者はコロナによる乗車数の減少と慢性的な乗務員不足を理由に挙げていたが、それだけではないように思う。
土日・祝日ダイヤの運行では1時間に1本(13時・14時台の新鎌ヶ谷駅行き0、帰りの新鎌ヶ谷駅発の12時~16時までは14:30発と15:50発のみ)のバスをどれだけの市民が利用する気になるだろうか。そして、西白井駅⇔新鎌ヶ谷駅間の直行しかないバスはやはりコミュニティバスの代替にはならない。日中の移動が中心の高齢者のニーズに合致していないように思う。コミュニティバスのようなバス停の多い、日中中心の運行形態では自治体の補助なしで民間事業者が採算に乗せることは難しい。だからこそ高齢者等の交通弱者の足としてコミュニティバスを走らせていたはずだ。新鎌ヶ谷駅直通のコミュニティバスが路線バスと競合するということはない。
👉西白井駅 バス時刻表~北環状線 鎌ヶ谷観光バス(生活バスちばにう)
👉新鎌ヶ谷駅 ⇒ 西白井駅 バス時刻表~北環状線 鎌ヶ谷観光バス(生活バスちばにう)
ちばにうの路線が無くなれば、西白井駅が最寄り駅の住民は公共交通機関を利用して新鎌ヶ谷駅に行くためには北総線以外に選択肢が無くなり、京成と行政の思惑どおりになることだろう。この路線が廃止されても市は「民間にできることは民間に」というかつてのフレーズを引っ張り出してくることだろう。市民の交通利便性は蔑ろにされている。
私は並行バスを立ち上げた事業者や支援者に同情するつもりはない。彼らは、もともと千葉ニュータウン地区の住民の交通利便性のために並行バスを立ち上げている。当初、白井に停車する予定はなかった。事業者は事業を立ち上げたときにうまくいかなければバスを売却するという不退転の決意を表明していた。
にもかかわらず、千葉ニュータウン中央駅⇔新鎌ヶ谷駅間の直行便の利用者が思うように伸びなかったために白井地区に停車して路線の存続を計ろうとしただけで白井地区の交通利便性を改善しようとしていたわけではない。
もし、ちばにうが並行バス事業から撤退することになれば、結局、京成や市に新鎌ヶ谷駅への直通ルート廃止と市民への北総線の利用の強要の口実を与えたことになる。市民は、できるだけ永く、マイカーを利用することになるだろう。車のない年金生活者は健康のためと割り切って徒歩で最寄りのスーパーに買い物に行くしかない。
こうした状況の中で白井の議員は、自分たちの報酬を上げる画策をしていたのだからあきれる。市長の愚策を放置し、行政の監視という仕事を蔑ろにしながらお手盛りで他市と比べて報酬が低いから上げろという主張に共感する市民はいないだろう。当初、北総線の運賃が他線と比べて高いという理由だけで運賃の値下げを要求していた北実会の主張と変わらない。自治体の非正規職員の給与問題の方がよほど深刻な問題だ。
もし、報酬を上げたいのなら、議員定数を半分にして報酬を5割増しにしたらどうだろうか。行政コストが下がり、議員の報酬も大幅に増えることになる。市民に碌に情報提供もせず、議会で挙手するくらいしかできず、まともな議会報告すら書くことができない議員はいらない。市長の応援団が多すぎるから禄でもない議案が可決され、一方で市民の請願や陳情がほとんど採択されないという現状を変えるべきだ。
今回は間に合わないが、それでも来週、投開票の市議会選挙には行くべきだと思う。そして、能力のない単なる市長の応援団メンバーには絶対に投票しないことだ。それが、市民の意思と怒りを示すことになる。今の段階で市民にできることはそのくらいだ。地縁、血縁、お友達というだけで投票してはいけない。投票を頼まれたらわかりましたと言っておけばいい。誰に投票したかは誰にもわからない。
私は以前のブログで白井市の人口について次のような言及をしていた。
「白井の人口の推移を調べてみた。2009年3月末と比較すると2022年9月末の人口は2,839人増え、世帯数も4,656世帯増えている。しかし、私も知らなかったのだが、2018年3月から今年の3月まで4年連続で人口が減少し、累計で1,027人減少していた。3月末と比べて9月末の人口は122人プラスの62,867人になっているが、前年9月末の62,828人にくらべると39人しか増えていない。マンションの販売により来年3月末の人口がプラスで着地しているか微妙だ。」
そして、この予想は外れていなかった。2023年3月末の白井の人口は▲52二人で着地していた。12月にマイナスに転じ、その後連続して減少し、3月は前月比▲104人と最大の減少となっている。自然減が大きく増えることは考えにくいから転入より転出が多かったことが原因だと考えられる。北総線の運賃値下げ後わずか3か月目で人口がマイナスになり、4か月間の累計減少数は▲221人にもなる。西白井駅前のマンション購入者の入居で一時的に人口減の実態が見えにくくなっていただけのようだ。この結果は、株式投資の世界なら売りから入る局面だ。薄ぺらな北総線の運賃値下げを生かした街づくりの未来は視界不良だ。貴方は、白井に投資する気持ちになるだろうか。貴方は、白井で暮らしてみたいと思うだろうか。
千葉日報が白井の人口減少を報じている。有料記事なので一部しか内容がわからない。
👉NTも高齢化、活気岐路 北総線値下げ生かせるか【白井市の課題 4・23市長選】~千葉ニュータウン(NT)の開発に伴って約20年前まで大きく伸びた白井市の人口は、少子化の加速で減少傾向に転じた。高齢化も進行。鉄道の北総線運賃値下げは好材料だが、まちの活気維持へ工夫が問われる岐路を迎えた。効率化に取り残される人を出さない配慮も必要。…(有料記事)
図書館で記事を閲覧してみたが、やはり表面的な中身の薄いちょうちん記事だった。マイナンバーカードの普及や住民票交付経費の削減等の市の取り組みを紹介する選挙に合わせた報道で見出しに合わせて書かれた作文だ。大切な広告主である事業者のために北総線の値下げをアピールするための記事なのだろうか。元々、北総線の値下げは波及効果のある内容に届いておらず、通学定期がやっと他の地域並みになっただけだ。普通運賃が高額のままでどうやって値下げの効果を生かすことができるのだろうか。無責任な記事を書くのはやめてほしい。
4月16日の無投票で再選した笠井喜久雄白井市長の発言を載せた記事はなぜか無料で公開されている。どういう基準で有料記事にするか、無料公開にするかを判断しているのだろうか。しかし、どちらの記事も北総線の運賃値下げがプラス材料という論調だ。暗い夜道を揉み手をしながら老人の足元をちょうちんで照らして誘導する太鼓持ちのようだ。
👉速報】千葉県内4市長選告示 白井市長選は無投票当選 佐倉、習志野、流山は三つどもえ 各地で市議選も 【ちば統一選2023】~笠井氏は2期目に向け「次の4年間は、このまま市の人口が減少するか、まだまだ発展するかが問われる。北総線の運賃値下げも追い風に、企業誘致や働く場所の確保を進め、ファミリー層も呼び込みたい」と意欲を語った。(無料公開)
白井の場合、他地域に比べても普通運賃はほとんど下がっていないのにどうやって北総線の値下げを企業誘致に結び付けるつもりだろうか。通学定期代も他の地域並みの水準になっただけの話なのでファミリー層が白井に魅力を感じることはないだろう。なしや競馬学校が誘致につながるはずもない。北総線の利用を前提にしたバス網は、はっきり言ってとても利用する気にならないレベルだ。利用者の少ないコミュニティバスをオンデマンドバスにと主張している市議会選候補者がいるが、それ自体は否定しないものの、人口減少の歯止めにはつながらないだろう。交通利便性や生活利便性を優先したいなら、新しい商業施設の開発が決まっている新鎌ヶ谷駅周辺の方がいいだろう。環境を優先するなら、白井は住みやすいところかもしれない。
西白井駅前のマンションの分譲はプラス要因になったものの5年前から始まった人口減の流れは続いているようだ。5年間で▲1,079人の人口減となっている。貯金がどんどん減っている。6万人の大台割れもそんなに遠くないかもしれない。現在、歳入が減っていないのは、消費税収入の増加が寄与していると考えられる。消費税の増税と最近の物価上昇による消費税の自然増収で税収が増えているのではないだろうか。
前述の県議会選の投票結果で前々回と今回の比較で最も有権者数が減少しているのは、西白井駅を最寄り駅にする大山口・大松地区(第7投票区)▲1,771人と七次台地区(第10投票区)▲1,648人だ。有権者数の数字は人口とリンクしていると考えられるのでこの地区の人口減少が進んでいると考えられる。2つの地区の有権者の減少は、3,419人に上る。この地区だけで8年間で年平均427人の有権者が減少したことになる。最近、京成が七次台⇔西白井駅の路線バスを減便したのもこの地区の人口減少の影響なのだろう。それでもこの路線を廃止することはないだろう。なぜなら、撤退して駅前のロータリーのバス停を他の事業者に明け渡しすことを京成はもっとも嫌うからだ。新鎌ヶ谷の駅前のロータリーの北総循環線のバス停も同じ理由で維持されている。
西白井駅前のマンション(270戸)の分譲による入居増は焼石に水にすぎないことがわかる。北総線の値下げ(新鎌ヶ谷駅までの運賃が西白井▲30円、白井▲50円)が人口増や街づくりにつながるはずもなく、県、沿線自治体6市、北総鉄道、オブザーバーの国土交通省関東運輸局、京成、千葉県企業土地管理局、都市再生機構で構成されたお仲間クラブの北総線沿線地域活性化協議会の施策は何の役にも立っていない。
意味不明の副駅名看板の設置、京成への経費補助が目的と思われるラッピングトレインとラッピングバス、乗換駅でもないのに駅のホームに設置されたガラス張りの無用の待合室、西白井駅の改札の中に設置されたアニメのキャラクター看板等々。集客につながるとは思えない愚策のオンパレード。アベノマスクに象徴される官僚や役人、事業者の無責任な税金の無駄遣いにいい加減にしてほしいと誰もが思っているはずだが、彼らには通じないようだ。
副駅名看板の設置より464号線の信号標識の「〇白〇駅」の文字が消えてなくなる前に直すべきだろう。最近、流行りの漢字の穴埋めクイズのようだ。おそらく、市の広報を読まない市民や北総線を利用しない市民は白井駅と西白井駅の副駅名看板の存在自体すら気づいていないだろうし、現在は、その存在を知っていた人からも忘れ去られていることだろう。かつて、「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ-。」という名ナレーションがあったが、最初から認知されていないものは思い出しようがない。可愛そうな副駅名看板よ…。
つい最近、スカイライナー(成田空港線)を認可した当時の元鉄道局長が天下りによる民間会社への人事介入で問題になっていた。本田勝氏は鉄道局長から航空局長になり、2014年に国土交通事務次官に就任しており、退官後は天下りと渡りを繰り返している。今回の北総線の値下げで北総鉄道の天下りの社長を称賛している議員がいるが、その見識の浅さには驚いている。民間事業者が天下りの後ろに控える許認可権を持つ官庁の顔色を窺っているだけだということを理解していないようだ。
北総鉄道の社長のイスも国交省のOBが回遊するための天下りリストに掲載されたポストの中の一つにすぎないのだろう。国交省の上のポストが詰まらないようにするために天下り先の確保は役人にとって必然だ。国会で北総線問題を取り上げたことのある公明党の斉藤鉄夫国交相は「基本的に国交省は一切関与していない。国交省とは関係のない人の言動。こちらでコメントする立場にない」と語っている。現在メトロ会長を務めている本田氏の人事は閣議了解されているというから、あ~あ~という感じだ。
👉国交省元次官が民間企業人事に介入?「OBを社長に」要請でクーデター画策か
👉「国交省は一切関与していない」斉藤大臣 元次官の企業人事介入問題
👉非公表の人事情報、外部の173件にメール 国交省の現役職員から~現役職員から、民間企業に天下ったOBに人事情報が送られていたとの指摘を踏まえ、国交省が確認した。
★国交省OB人事問題 航空局長の会食判明 斉藤国交相 調査を依頼~国土交通省の元事務次官が空港施設の運営会社に対してこの会社の副社長だった国土交通省のOBを次期社長にするよう求めた人事介入問題に関連して、この問題が報道される2日前に、久保田雅晴航空局長が、問題の元事務次官と会食していたことが新たに明らかになりました。(2023/05/19 NHK)
北実会も最近は開店休業中のようで10月の北総線の値下げ後の活動が伝わってこない。恒例の選挙前の候補者への北総線問題に関する質問状も今回は実施していないようだ。肝心の線路使用料問題は何にも解決していないのに彼らの北総線問題は既に終わったようだ。そして、彼らが主張していたメタボ運賃も解消されていない。長いこと北実会のホームページを見ていなかったが、しばらくぶりに覗いてみたら体裁だけは格段に良くなっていた。 副駅名看板と同じ運命なのかもしれない。