事例(交通⑧)

BRTが地方の公共交通を救う!?~公共交通と言われながら、自治体の関与は薄かった都市部の路線バス。マイカー依存が強い地方都市では利用減が減便・廃線への悪循環を招くことが懸念される。それを食い止める狙いで2年半前に中心部の幹線でBRT(バス高速輸送システム)の運行を始めたのが、新潟市だ。BRTと路線バスを組み合わせた公共交通に未来はあるのか。――今後を展望する。…ただ、BRT専用走行路が用意されているわけではない。車両は路線バスと同様に一般の車線を走る。ICカードは導入されているものの、運賃収受の方法は路線バスと変わりない。走行時間や乗降時間の短縮を可能にする特別な仕掛けはない。それでも定時性を比較的高く確保できている理由を挙げるなら、運行区間が約7㎞と短いことが一つ。新潟市都市政策部新交通推進課課長補佐の小林久剛氏はさらに、「もう一つ、路線バスの集約効果も考えられる」と指摘する。…半面、郊外部との間を行き来するには、BRTと路線バスを乗り継ぐ必要が生じることになった。BRTの走行区間は中心部の幹線にあたる約7㎞に限られ、この区間と郊外部との間、つまりBRTという幹線に接続する支線にあたる部分は、路線バスしか走行していないからだ。BRTの運行区間内に置かれた4カ所の交通結節点での乗り換えを前提にした交通システムなのである。…市が公共交通システムの再構築に乗り出した背景には、利用減という課題がある。新潟市で公共交通と言えば、新潟交通が運行してきた路線バスだ。同社の資料によれば、その利用者数は年を追うごとに減り続け、例えば1980年は年間約9500万人だったが、1990年は約6900万人、2000年は約4100万人、と落ち込んでいた。半面、自動車依存は高まるばかりだ。新潟都市圏パーソントリップ調査によれば、新潟市を中心とする都市圏域で代表的な移動手段として自動車が占める割合は1978年度には41.0%だったが、1988年度には52.0%に高まり、2002年度には70%近くに達している。同じ調査を実施する全国の都市圏の中でも際立って高い数値だ。…公設民営という事業方式の中で市が受け持ったのは、乗り換え拠点になる交通結節点の整備、運行事業者に無償貸与する連節バスの購入、情報案内システムの整備など、BRTの運行に必要な施設・設備やシステムの整備である。合計事業費は約11億7000万円。その半分は国の社会資本整備総合交付金で賄ったという。…確かに、BRT萬代橋ラインは郊外部との間を結ぶ路線バスの維持には役立っていると言えよう。ただ、それがにぎわい創出につながる基幹公共交通軸として機能しているとまでは、いまはまだ言い難い。…市の「新たな交通システム導入検討委員会」で委員長を務めた横浜国立大学理事・副学長・教授の中村文彦氏は、「BRTの『R』は『Rapid』。それを実現できなければ、BRTではない」と言い切る。信号制御や運賃収受などの仕組みにいわゆる速達性を確保する仕掛けを組み込めなければ、路線バスと同じ位置付けになってしまいかねない。…にぎわい創出につながる基幹公共交通軸の形成を目指すなら、クルマ社会に正面から向き合っていくことが欠かせない。(2018/2/6  未来コトハジメ)

「空気を運ぶバス」は予約制にすれば解決? 「デマンドバス」で地域交通再生なるか~特に地方では、人口減少やマイカーの普及などにより路線バスの利用者は年々減少しています。そうした状況で、特に地方自治体が運行するコミュニティバスでは、誰も乗っていないのに運行するという、いわゆる「空気輸送」をなくして予算を削減し、財政負担を軽減するため、デマンドバスやデマンドタクシーの導入が進んでいます。そういった性格上、なかには予算削減や利用促進のための奇策を打ったり、地域住民向けに特化したしくみを作ったりと、自治体により様々な施策が見られます。…もともと、玉城町では29人乗りマイクロバスによる路線型の「福祉バス」を走らせていましたが、1便あたりの平均乗客数は4、5人だったそうです。この「福祉バス」をワゴン車によるデマンド型の「元気バス」へ移行させていったところ、500人に満たなかったひと月あたりの乗車人数が、月によっては2500人を超えるなど、大幅な利用促進につながっています。(2018/08/27 乗りものニュース)

日本中で“2倍長い”「連節バス」が増えている2つの「裏事情」海外でよく見かける“あのバス”です~こうして「1台でも大きな輸送力を持つ」連節バスを導入する都市は着実に増えていく。冒頭でも紹介した通り、現在は西日本を中心に全国に広がりつつあり、岐阜市、新潟市、福岡市など11都市で路線バスとして運行されている。近年導入が進んだのは普及活動や販売ルートができたことのほか、2つの大きな理由がある。1つは、新しい公共交通輸送システムのPRにおいて連節バスが広告塔になるためである。…もう1つの理由は運転士の不足だ。バス業界も人手不足は深刻で、日本中のバス会社が運転士の確保に悩まされている。…特に駅から離れた場所に大学や大規模事業所があるところでは、朝のわずか1時間程度のピーク時に大量のバス、そして運転士が必要となる。そこに輸送力のある連節バスを導入して、少しでも必要な運転士・バスの数を減らすことで、他の路線に運行本数をしっかり配分できるように工夫しているのだ。こうした話は事情が事情ゆえに、あまり表だっては言われない。しかし連節バスは、運転士不足に悩む全国のバス会社が是非導入したい「ソリューション」であろう。さて「連節バスが全国で増えてきている」と書いてきたが、じつは導入はゆるやかにしか進んでいない。(2018/10/22 文春オンライン)