赤字路線を救ったバス会社社長が語る、路線バスの本当の役割連載・地方創生へスイッチを入れる人たち(2)/イーグルバス・谷島賢社長~そもそも赤字自体を問題視すること自体がナンセンス。(路線バスの赤字は)公共インフラのコストとして自治体が支えるべきだ。ただ、路線バスの維持自体が目的化されてしまうと問題だ。地域の足を維持するのが目的なら、別の方法もあるだろう。…住民の足は福祉政策として(一定の曜日や時間を決めて運行する)「目的輸送」で対応すべきだ。路線バスという公共交通の役割ではない。公共交通は「内外交流」のインフラ。路線バスが365日朝晩運行するのは、外の人が地域にいつでも来られる体制を整え、街を活性化するためだ。目的輸送と公共交通を混同して議論していては、解決策は見えてこない。…今では自治体から(採算を合わせる)補助金をもらっても運行できない時代になりつつある。バス会社は利益のある別のバス事業を抑えて、その運転手に路線バスを任せて支えているのが現状だ。公共交通を担う会社としての顔と民間企業としての顔が揺れ動いている。…運行ダイヤの最適化といった「改善」で効果を上げ続けるには限界がある。その中で、新たに利用者を創り出す「創客」が大事だと考えている。我々はバスを用いた「交通まちづくり」を推進し、観光客が路線バスを利用する環境を整えた。通勤通学による乗客が少ない平日日中や土日といった時間帯の空白を埋めた。…(町の中央にハブの停留所を新設し、すべての路線バスがここで乗り換える)「ハブ&スポーク方式」を取り入れた。その上で埼玉県東秩父村(の交通再編)では、ハブ停留所に買い物や観光の施設を集約し、人が集まるようにした。交通まちづくりは路線バスの需要創出になるし、街の活性化にもつながる。
(2019/5/3 ニュースイッチ)
「鉄道以外」で99%を稼ぐユニーク私鉄、遠州鉄道と静岡鉄道を大解剖! ~こうして数字を並べると、遠鉄グループ、静鉄グループともに斜陽の鉄道に見切りをつけて、自動車社会に対応した事業に注力しているように見えるかもしれない。ところが、両社とも、中小私鉄の水準を大きく超える運輸サービスを提供していることで有名なのだ。遠州鉄道西鹿島線はJR浜松駅前(新浜松駅)から天竜川の上流へ向けて放射状に伸びる全長17.8kmの路線だ。単線だが浜松市街地は高架化されており、ほとんどの駅に行き違い設備があるため、日中は2両編成の電車が12分間隔の運転を行っている(朝ラッシュのみ一部4両編成で運行)。静岡鉄道静岡清水線は、JR静岡駅前(新静岡駅)から清水区まで、JR東海道線に並行して走る全長約11kmの路線だ。こちらは全区間が複線で、2両編成の電車が日中7分間隔という高頻度運転を行っている。運賃はどちらも初乗り120円。鉄道とバスに対応した独自のICカード乗車券として、遠州鉄道が2004年に「ナイスパス」を、静岡鉄道が2006年に「LuLuCa」を導入しており、首都圏のPASMOに先駆けて、電車とバスのIC化を実現している。(2019/6/10 ダイヤモンド・オンライン)
京丹後市「上限200円運賃」は地方交通の革命か 補助金をうまく使えば利用拡大が期待できる~まず実証実験を翌年から4年間行い、2010年から本格実施とした。2013年からは隣接する宮津市・与謝野町・伊根町の丹後地域の2市2町全域で、自治体内ごと上限200円としている。実証実験が始まった年度から、利用者数の減少が止まり反転しはじめた。利用者の6割は高校生で、それまではマイカー送迎のほか自転車、原付バイクなどで通学していた。200円なら定期券代が出せると判断した家庭が多かったようだ。200円で通学できるので遠くの高校を選べるようになったという声もあった。京丹後市では以前から、多くの地方のバスと同じように、丹海バスに補助金を出しているが、実証実験前と比べると2018年度の利用者数は約2.7倍にも増大しており、補助金額はほとんど変わらない。利用者増加に伴い、バス停新設や路線拡充も行うことができた。これも利用者増の要因になった。…こうした状況に影響を受けたのだろう、市内を走る唯一の鉄道である北近畿タンゴ鉄道でも上限200円運賃を導入した。…バスと違うのは65歳以上の高齢者限定であることで、市の援助を受け、2011年に土日祝日の実証実験を開始し、翌年平日に拡大。2013年には丹後全域で本格適用をスタートしている。利用に際しては、パンフレットから切り取った200円レール切符と運転免許証、健康保険証などの身分証明書が必要となる。…これ以外にも京丹後市には革新的な交通サービスがある。例えばタクシーが撤退した旧網野・久美浜町には2015年から、電気自動車関連の補助金制度を活用した「EV乗合タクシー」が走っている。タクシーと銘打ちながら移動のみならず、小荷物輸送、買い物代行、見守り代行、図書館代行、病院予約代行も行っており、全国初の事例となった。…ただし課題がないわけではない。いまや東京23区でも露呈しているバスの運転士不足はこの地域も同様であり、2018年11月には丹海バスが、宮津市内の6路線の維持が困難という方針を示した。路線廃止や減便が現実となれば、利用者離れにつながる可能性もある。…多くの交通には補助金が使われているが、筆者も何度か報告してきたように、欧米の都市交通は税金や補助金主体での運営が一般的だ。京丹後市も補助金をうまく活用したからこそ次々に改革を打ち出せたわけで、運賃収入だけを取り上げて黒字赤字と騒ぐのは、そろそろ幕引きにしてもらいたいものである。(2019/06/23 東洋経済)