事例(街づくり⑥)

なぜ千葉県流山市は、資産価値の下がらない街づくりと子育て世代のブランディングに成功したのか?- 日本を変える 創生する未来「人」その7~同市は、よくある首都圏界隈のベッドタウンとは異なるユニークな施策とマーケティング戦略によって、急激な少子高齢化の進行をわずか14年間で食い止めたどころか、逆に子育て世代の人口を増加させたのだ。…現在、流山市の人口は約19万4000人(令和元年11月現在)で、年4000人から5000人のペースで増加。人口増加率は、千葉県の自治体で6年連続1位をキープしているそうだ。すべての世代での転入超過数も、全国の自治体のなかで8位(平成30年)と好位置につけている。…都心へのアクセスが良いことに加え、緑が多い良質な住環境があることが人気の高いまちの共通する条件です。「TX沿線で一番早く、一番高く売れる街」の条件を満たすため、流山市の都市計画を進めてきた。…この戦略の一環で「流山グリーンチェーン認定制度」を設けたという。…この制度の狙いは、端的には接道面に一定の高さの木を一定間隔以内で植樹すること。道路表面の温度上昇や放射熱の抑制、住宅敷地間の通風確保、地球温暖化の原因となるCO2排出の抑制効果など、7つの指標をベースに評価して認定する。平成18年から始まり、戸建・集合住宅・商業施設を合わせ、令和元年5月現在298件、約6,700戸の住宅に認定実績があるそうだ。…実際に東京大学の調査では、グリーンチェーン認定を受けたマンションは、認定を受けていないマンションよりも一戸あたり約494万円も高いという結果が出ています。…2つ目の戦略は、定住人口の増加を狙い、メインターゲットを共働きの子育て世代「DEWKs」(Double Employed With Kids)に設定し、さまざまな施策を打ち出したことだ。親が安心して共働きをするには、子供を預ける保育園が必要になる。2010年時点で市内に保育園は17園あったが、そこからの10年間(2020年度)で77園まで増える予定だ。今年の春、流山市の保育園数はコンビニの数を超えたそうだ。…なかでも子供を持つ親に大変評判が良い施策が「駅前送迎保育ステーション」だ。これは10年ほど前に流山おおたかの森駅と南流山駅に設置されたもので、このステーションと市内の指定保育園をバスで結んで、園児たちが登園・降園できるシステムだという。…このような施策の結果、流山市の人口構成はわずか10数年で大きく変わった。平成17年は30代後半から40代半ばの子育て世代が極端に少なく、人口構成に2つの山ができていた。しかし現在は人口が4万人も増え、同世代が明らかに増えて山が1つに戻った。短期間で変貌した好例と言えるだろう。…さらに特筆すべき点は、合計特殊出生率(一人の女性が15歳から49歳までに産む子供の数の平均)の推移だ。平成16年と比べると1.14から1.62へ、4割も増えている。また、市内の全小学校を対象に行った児童のキョウダイ人数の調査では、2人キョウダイが56%を占め、一人っ子(15%)よりも3人キョウダイ(24%)のほうが多いのだ(出生率は2.19)。

 (2019/11/27 WirelessWire News)

高齢化率50%「横浜のニュータウン」に変化の波 大和ハウスが「再生」に乗り出す背景事情~神奈川県横浜市栄区に「上郷ネオポリス」というニュータウンがある。1970年に大和ハウス工業が開発を始めた戸建て団地だ。鎌倉市との境にあり、大変緑豊かな立地である。現在は868戸に約2000人(2019年9月現在、上郷ネオポリス自治会調べ)が居住している。注目すべきは約50%(2017年9月現在、横浜市政策局統計情報課調べ)という高齢化率だ。全国の高齢化率は平均27.7%、横浜市では平均24.0%(いずれも2017年)であることを考えると、上郷ネオポリスは超高齢地域といっていい。…採算面を含むニュータウン再生を地元の自治会が主体となって実現するのは、相当な大変さが伴うと考えられる。そもそも、まちづくり協議会の設置をはじめ、ネオポリス内の意見の調整さえ難しかったからだ。…注目すべきは上郷ネオポリスの再生が、大和ハウス工業が住民と企業や自治体との間を取り持ち、協力を得る一方で、実践的なアイデアや取り組みを行う「タウンマネジメント」を展開することで進展しているという点だ。…同社では、1962年から全国61カ所、延べ7万区画(約30k㎡)でネオポリスを開発してきた。その中には、開発から40年以上経過した、上郷ネオポリスと同様の課題を抱えている団地もある。このため、上郷でのニュータウン再生、タウンマネジメントの手法がうまくいけば、ほかのネオポリスの再生にもノウハウを生かすことができると考えているわけだ。さらには他社開発のニュータウンにも拡大でき、その中からリフォーム・リノベーション、ストック(中古)売買、住宅医療・介護施設などといった需要が生まれれば収益も生まれ、今後も持続的な企業の成長が期待できる。(2019/12/14 東洋経済)