総括原価は大手民鉄等事業者等に適用されるものと大手事業者以外の北総鉄道のような中小民鉄事業者に適用される2種類があります。二つの総括原価の違いは大雑把に言うと以下のようなものになります。
〇大手民鉄等事業者等に適用される総括原価 🔗現行の収入原価算定要領
・原価の一部の算定に競争原理を取り入れるしくみが採用されている
・事業資産の増減に応じて事業報酬が変動するしくみになっている
・事業資産に乗じる報酬率に実勢の平均レートが採用されている
〇中小民鉄事業者に適用される総括原価 🔗現行の収入原価算定要領
・支払った経費、支払利息すべてが原価として認められる
・事業資産とは無関係に払込資本金の額に比例する固定的な適正利潤が認められている
*鉄道事業は莫大な資金が必要なため払込資本金も大きく、このため適正利潤も巨額になる
<問題点>
・中小民鉄事業者には巨額の総括原価が認められるため事業者の能率的な経営努力が期待できない
・大手民鉄事業者等の総括原価も事業者の作成した内容をチェックすることの困難さの指摘がある
(注)本資料は下記の平成10年北総開発鉄道の運賃改定に係る平成10年8月27日第54回運輸審議会議事録添付資料「北総開発鉄道㈱の収支実績及び推定の計算基礎」を基に企業会計ベースで作成したもの
「大手民鉄等事業者等の収入原価算定要領」の規程する総括原価とは
〇総括原価=営業費+事業報酬
(ヤードスティック方式+レートベース方式の適用)
〇営業費
「ヤードスティック方式による営業費」+「その他の営業費」
〇事業報酬
レートベース×報酬率=支払利息や配当金に相当
〇レートベース(事業資産)
収入原価算定要領に規程された7項目(期首・期末平均固定資産、期首・期末平均建設仮勘定等)
〇報酬率
自己資本報酬率×30%+他人資本報酬率×70%
〇自己資本報酬率
(公社債応募者利回り+全産業平均自己資本利益率+10%配当を前提とする配当所要率11%)/3の過去5年平均
〇他人資本報酬率
法定債務を除き債務実績利子率のグループ(JR・大手民鉄・地下鉄)別平均の過去5年平均
大手民鉄線の収入原価表の例(平成22年に京成が申請した「成田空港線平年度収入原価表」)
(注)事業報酬率の算定が算定要領とは異なっている。算定要領では自己資本報酬率の自己資本比率は30%、他人資本報酬率の他人資本比率は70%と規定され、過去5年間の平均と規定されている。算定要領に沿っているかどうかで総括原価が適正かどうかを判断することになっているのではなかったのか。結局、算定要領より裁量が優先されるということのようだ。
中小民鉄事業者の収入原価算定要領(平成8年版) *赤枠「1.基本方針」が現行規定から削除されている!